とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

映画「ファーストラヴ」を観賞

映画「ファーストラヴ」主演:北川景子、監督:堤幸彦を観てきました。

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「ファーストラヴ」は島本理生さん原作の小説で、第159回直木賞受賞作品です。

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タイトルだけ見ると恋愛小説なのかなと思ってしまいますが子供の性的虐待というとても重たいテーマを扱ったミステリー小説といっていい作品です。

登場人物の設定がしっかりしていて感情移入しやすく、作品中に謎や伏線がたくさん散りばめられていて重たい作品ながら一気読みしてしまいました。

そんな作品を堤幸彦監督がどの様に映像化してくれたのかとても興味深かったので休日に早速観に行って来ました。

結論から言うと映像と音楽にすっかり引き込まれました✨

時間的に制約があるので小説に出てきたエピソードで映画に描かれなかったシーンや出てこない登場人物もいましたが、重要なシーンはしっかり描かれていたのでさほど違和感も感じませんでした。

主演の北川景子や、中村倫也窪塚洋介といった主要な役を演じた俳優も原作との違和感は全く感じずすんなり入ってきました。

圧巻だったのが殺人を犯した女子大生を演じる芳根京子です。原作ではそれほど感じなかったのですが情緒不安定になって錯乱するシーンや面会に来る主人公に挑発的になったり怒鳴ったりするシーンは狂気を感じてゾッとなりました。

朝ドラでヒロインを演じていた頃は可愛らしい若手女優という認識しかなかったのですが、演技派で実力のある俳優という認識に変わりました。

また、原作では印象が薄かった窪塚洋介が演じる主人公の夫でカメラマンの真壁我聞が妻や弟を優しく見守る姿勢や眼差しがとても印象的で良かったです。

彼が撮影した作品や、その作品を見て主人公の由紀を演じる北川景子が涙を流すシーンは原作にはない場面ですが見ているこちらも涙を誘われました。

家庭に闇を持つ聖山家や由紀の家族と原作には登場しない真壁家の幸せそうな笑顔の家族写真との対比が家族というものを描くこの作品の象徴だと感じました。

また、Uruが歌う主題歌のメロディがとても切なく、彼女の歌声とすごくマッチしていてこの映画にピッタリだと思いました。

とても重たいテーマの作品ですが観た後の感じは清々しくて前向きな気持ちになれました✨

他の人にも原作と映画の両方をみてほしいです。

「ファーストラヴ」島本理生(文藝春秋) 1600円+税

第159回直木賞受賞作品です。

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実は2018年の11月にこの本を買って、すぐに読んだと読書アプリに記録が残っているし、本棚にきっちり収まっているのですが、とんと内容が思い出せず、今回映画化されたということで再読してみました。

アナウンサー志望の女子大生聖山環菜が採用試験を受けた直後に父親を刺殺。親子の間に何があったのか?

臨床心理士の真壁由紀と弁護士の庵野迦葉が事件を追っていくと、次第に聖山家の闇が見えてくる。

あらためて読んでみると、性的虐待という家庭の闇をあつかったとても重たい作品なのですが、登場人物たちの設定や心理描写、心の変化していく過程が面白く、思わず感情移入してしまい物語に引き込まれました。

また、ミステリー的な要素も多くあるので、早く答えが知りたくてどんどん読み進めました。物語が進むにつれて謎が解けたり伏線の回収がきっちりあってその点も面白かったです。

そして終盤の法廷での裁判のやり取りもヒリヒリするような緊張感が伝わってきて胃がキュッとなりました。

タイトルだけ見ると恋愛小説なのかなと思ってしまいますが、「ファーストラヴ」というタイトルにも悲しくて切なくて深い理由があって、それを知るとじわっと涙が滲んできました。

「愛情ってなにか分かる?私は、尊重と尊敬と信頼だと思ってる」

この主人公で臨床心理士庵野由紀が聖山環菜に言った言葉が特に印象に残っているし、物語の大きなテーマだと思いました。

なぜこんな面白い作品を失念していたのか本当に不思議です。

映画はどの様に描かれているのか是非観たいと思います。

「逆ソクラテス」伊坂幸太郎(集英社) 1400円+税

2021年本屋大賞ノミネート作品です。

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小学生の子供たちを主人公にした5編の短編集です。

嘘をついてはいけません、人を見た目で判断してはいけません、自分の価値観を人に押し付けてはいけません、といった大人でも犯す過ちをテーマに子供目線から見た物語です。

ミステリー的な要素は薄いですが解りやすく面白くてすいすい読めました。

光文社文庫の「日向坂文庫2021冬の書店デート」フェア

よく行く書店で光文社文庫のキャンペーンを大々的にやっていました。

その名も「日向坂文庫2021冬の書店デート」フェアです。

日向坂(ひなたざか)とは現在人気急上昇中のアイドルグループ日向坂46の事です。

もともと欅坂46(漢字けやき)の姉妹グループである、けやき坂46(ひらがなけやき)として結成されたのですが2019年の春に日向坂46に改名して別のグループとなりました。

2019、2020年と2年連続で紅白歌合戦出場を果たし、2020年の12月には東京ドーム公演が予定されていたのですがコロナウイルスの影響を受けて2021年に延期されています。

日向坂46はバラエティーに対する対応能力もあって最近テレビにもメンバーがよく出演しているのを見るので僕も大好きです。

彼女たちには見る人を明るくさせるパワーがあってファン(おひさま)の間では「ハッピーオーラ」と呼ばれていて日向坂46の代名詞となっています。

現在メンバーは全部で22人いるので、日向坂文庫は22冊あるようですがメンバーの年齢によって本も大人向けの作品からまだ高校生のメンバーのものはライトノベル的な若年層向けの作品から選ばれている印象でした。

さすがに金銭的にいっぺんに全部買うのは無理だし、僕はグループ全体を応援しているいわゆる箱推しなので特に推しているメンバーがいるわけでもありません。

推しメンがいる人なら迷わずその人が表紙を飾っている作品を選ぶんでしょうけど、僕はとりあえず好きな作家で選びました✨

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「刑事の子」宮部みゆき

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女性ファッション誌でモデルを務めるほどきれいなのにそれだけじゃなく面白くてバラエティー番組でも大活躍の1期生メンバー、かとしこと加藤史帆さんが表紙です。

宮部みゆきさんの作品は「小倉写真館」や「ぺテロの葬列」など幾つか読んだことはあるのですが、ミステリー、ホラー、時代小説といった多岐にわたる分野の作品を書かれているのでこれからどんどん読んでいきたいと思っています。

「おさがしの本は」門井慶喜

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大学で日本文学を専攻し古典の研究もしているという2期生メンバー宮田愛萌さんが表紙です。彼女のブログでは本の紹介もよくしているので楽しく読ませてもらっています。

現在は体調不良で休業中とのことで心配ですが体調を万全にして早く復帰してもらいたいです。

門井慶喜さんの作品は先月「銀閣の人」という足利義政を主人公にした歴史小説を読んだばかりだったので買いました。

この作品は歴史小説ではありませんが図書館司書が主人公のようです。つい最近読んだ本屋大賞ノミネート作品の「お探し物は図書室まで」(青山美智子)という作品も司書が出てくる話だったので読み比べが楽しみです。

「ひなた」吉田修一

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日向坂46のキャプテン佐々木久美さんが表紙です。

この人がいたからこそ今の日向坂46があるんだと思います。普段はとても明るくてメンバーを元気に引っ張っていきますが、怒るときには怒るというメリハリのある人のようで、後輩メンバーからも尊敬されています。

吉田修一さんの作品は「怒り」しか読んだことはありませんがこの作品は強烈な印象があったので読んだのは何年も前ですが今でもよく記憶に残っています。

「ひなた」はどんな作品なのか、まだわかりませんがまさにグループを引っ張ってきた佐々木久美さんが表紙にふさわしいタイトルですね。

芥川賞直木賞本屋大賞ノミネート作品発表と立て続けにあって大量に本を購入したところだったので積ん読本がたくさんあるのですが、早く読んでいきたいです✨

「犬がいた季節」伊吹有喜(双葉社) 1600円+税

2021年本屋大賞ノミネート作品です。

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昭和から平成に代わる頃に三重県四日市市の、とある高校に保護された1匹の捨て犬と世話をする係りになった歴代の生徒たちをめぐる連作短編集です。

1980年代後半から21世紀をむかえる直前の2000年までを5章に別けて阪神淡路大震災やF1日本グランプリなどの災害や出来事、ヒット曲を交えて節目節目で起こった出来事に触れながら物語が綴られています。

混沌として先が見えず、時代の大きな変革期である現代と、高校3年生という受験や部活、恋愛など大きな変化がある時期を重ね合わせています。

自分は何者なのか、どうすればいいのかわからずに悩むある登場人物の高校生は、嵐のなかを行くものに勇気を与え、守り導くという船乗りたちの伝説の炎「セント・エルモス・ファイアー」がほしいと願います。

また、美大を目指す高校生は「思うように画けるかどうか不安になっても、昨日よりきょう、今日より明日。佳いものになると信じて画いていくしかない」と言います。

家庭の事情や友達との関係、成績の良し悪しなどで悩むそんな生徒たちに寄り添う犬のコーシローがとても可愛らしく登場人物たちと共に読んでいて癒されます。

自分も将来に漠然とした不安がありますが、セント・エルモス・ファイアーを探し求め、これから佳くなっていくと信じて歩いて行きたいと思いました✨

「お探し物は図書室まで」青山美智子(ポプラ社) 1600円+税

2021年本屋大賞ノミネート作品です。

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ブックカバーのデザインを一目見て、ほんわかする内容の物語を予想したのですが、実際にその予感は的中し、とてもハートフルで心がポカポカし、読後感も清々しくてとても気持ちがいい作品でした✨

この作品は全部で5章あって、それぞれ主人公が違う連作短編集です。

年齢も職業も違うそれぞれの章の主人公たちはみんな何かしら問題を抱え、何かを見失っています。

それは仕事をする目的だったり、モヤモヤの解決法だったり、あるいはもて余した夢の置場所や自分の居場所だったり。

そんな登場人物たちがたまたま訪れたコミュニティハウスの中にある図書室にいた巨大な女性司書の小町さゆりに選んでもらった本と付録で貰った羊毛フェルト

本とフェルト自体に何か力があるわけではないけれど、登場人物たちはその中から自分で必要なものを受け取ってそれぞれ抱えた問題を解決していきます。

問題を解決していく過程で大切な人や大事な物に気付いて成長していく姿にうるっときたりほっこりしたりとても温かい気持ちになりました✨

また、章ごとに主人公は違いますが連作短編なので間接的に繋がっていて、前の章に出てきた人物たちがその後どうなっているかがわかるのも良かったです🎵

この作品を読んで、心が動き人生を好転させて心豊かな日々をおくれるようになるのが読書の醍醐味だと思いました。

これから自分ももっともっとたくさんの本を読んで作り手の狙いとは関係無く、自分自身に紐づけして自分だけの何かを見つけて人生を豊かに生きて行きたいと思います。

「自転しながら公転する」山本文緒(新潮社)1800円+税

2021年本屋大賞ノミネート作品です。

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500ページ近い大作で、平日の仕事の合間などに読んでたら読破するのに4日かかりました😅

普段あまり恋愛小説は読まないのですが、本屋大賞ノミネート作品ということもあり、この不思議なタイトルにも惹かれて思わず手に取りました。

恋愛、仕事、親の介護といった問題をいっぺんに抱え込んでしまって悩みもがき苦しむ、ごく普通のアラサー女性が主人公の物語です。

本のタイトルは、そのいろいろな問題を抱えながらあっという間に時間が過ぎていく様を秒速465メートルというものすごい速さで自転しながらその勢いのまま秒速30キロで公転している地球に例えています。

しかも地球はただ円を描いて回っているんじゃなくて、太陽自身も銀河系の中を渦巻き状に回っているのでぴったり同じ軌道には一瞬も戻れない。

人生はすごいスピードで回りながら宇宙の果てに向かっている地球のようなものだと。

アラサー女性の与野都は中卒で年下の寿司職人の彼との将来に不安を持っています。

また、職場の人間関係、上司からのセクハラ、女は早く結婚して子供をつくることが一番の幸せという古い考えを持つ父親との摩擦に悩みます。

おまけに母親が重い更年期障害になってしまい介護が必要に。

さらに、結婚して幸せな家庭を築いている親友と、自立していて高学歴の年上の恋人といい関係を築いている後輩をただ羨ましく思い妬んでもいます。

そんな中、年下でイケメン、おまけにお金持ちのベトナム人ニャン君から猛烈アプローチを受けることに。

都は果たしてどんな決断をするのか。

悩んでいる割にはあまり深く物事を考えず、将来のビジョンも無く、調べようともせずにただ周囲を羨んだり八つ当たりする主人公にイライラしましたが、自分も含めて案外こういう人は多いんじゃないかとも思いました。

光陰矢の如し。過ぎた時間は2度と帰ってこないのだから、将来のビジョンをしっかりと持って、そこに向かって努力していくことが大事だとあらためて感じました。