とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

宇宙皇子 第3期妖夢編2 忍ぶ草を結んで 藤川桂介 カドカワノベルズ

宇宙皇子(うつのみこ)〈妖夢編 2〉忍ぶ草を結んで (カドカワノベルズ)

あらすじ

平城京に都が移り、天平文化が花開いた一方で聖武天皇孝謙天皇と代替わりするにつれて帝の現人神(あらひとがみ)としての力が衰えて国を治めることが容易ではなくなりつつあった。

 

そのため、聖武天皇平城京に廬舎那仏を建立し、全国にも国分寺を築いて仏教の力によって国を治めようと試みるが各地で妖魔が跋扈しはじめて民を苦しめていた。

 

妖魔に苦しめられる民たちを救うために宇宙皇子(うつのみこ)、各務を中心とする金剛山の修験者たちは各地を奔走する。

 

彼らは果たして妖魔を鎮めることができるのか?

感想

もう30年以上も前、高校生の頃にドはまりして夢中で読んでいた飛鳥、奈良時代を舞台にした歴史ファンタジー小説です。

 

はじめは表紙カバーのいのまたむつみのイラストに惹かれてジャケ買いしたのですが物語にもはまって飛鳥、奈良時代といった古代史にも興味がわいて奈良でお寺巡りなどもしました。

 

最近そのことを思い出してまた読んでみたいと思い立ちアマゾンで購入しました。

 

宇宙皇子という作品はかなりの長編の物語で、地上編、天上編、妖夢編、煉獄編、黎明編の5部構成となっていて、それぞれが10巻まであってウィキペディアによると黎明編だけは8巻で完結しているようですが全部で48巻まであるようです。

 

僕は当時妖夢編の途中でよむのをやめてしまったのでその後どのような展開でラストはどうなったのかを知りません。

 

地上編と天上編は今でも実家の本棚に並んでいるのですが妖夢編は途中までしか読んでおらず、捨ててしまったので、とりあえず妖夢編の10冊を購入しました。

 

今は昔の作品でもわざわざ東京の神田神保町まで行かなくてもネットで探せば割と簡単に手に入るので便利な時代になりました。

 

こうやって若い頃に読んで印象に残っている作品を何十年後かに改めて読んでみてどう感じるのか、あのころとは違うのか、それとも変わらないのか確かめてみるのもいいものですね。

 

当時途中であきらめて読んでいない妖夢編、煉獄編、黎明編を最後まで読み切りたいと思います。

 

 

太陽は動かない 吉田修一 幻冬舎文庫

太陽は動かない (幻冬舎文庫)

国家間の新しいテクノロジーや新エネルギーの技術といった次の時代の主導権をめぐる争いの裏で暗躍する秘密組織のエージェントたちを描くスパイ小説のような物語です。

 

心臓に爆弾を埋め込まれ、24時間ごとに組織に連絡を入れないと、裏切ったとみなされて爆死するという、死の危険と隣り合わせのエージェントたちが世界を舞台に活動し、ピンチとアクションの連続で今日の敵が明日は味方だったり、またその逆もあったりして息つく暇もないエンターテインメント小説です。

 

吉田修一さんの作品は過去に「怒り」と「ひなた」と二作品を読んだことがあるのですが、三つともテイストが全く異なる作品で、作者の懐の深さを感じました。

 

 

 

なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか? 西剛志 アスコム

なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?

あらすじ

うまくいく人といかない人の最大の違いは「コミュニケーション」にある。

 

「自分の脳と相手の脳が見せる世界が違うということをしっかりと認識している人」がコミュニケーションスキルが高いということ。

 

あなたが見ている世界は、あなただけに見えている世界です。

あなたと一緒にいる人が見ている世界は、その人だけに見えている世界です。

私たちが互いにわかりあうためにできることは、まず、その違いを認めることです。

 

私たちの脳は3つのタイプに分かれます。

  1. 視覚を優先するタイプ
  2. 聴覚を優先するタイプ
  3. 触覚、味覚、嗅覚などを含めた体の感覚を優先する体感覚タイプ

私たちの脳は利き手や男女、欧米人と日本人といった体の特性でも違う傾向がある。

 

また、私たちの脳は柔らかいものに座ると心が穏やかになる、温かいものを持っているとやさしくなる、緑のあるところで暮らすと創造性が高まる、など、環境によっても違う傾向にある。

 

婚活や投資で失敗する人は、こだわりが強く視野が狭い、たった一回の出来事で、100%正しいと思う人がいる、など、私たちの脳は、思い込みによっても違う傾向があります。

 

私たちは分かり合えないのが自然です。だからこそ、それを受け入れることが大切なのです。

 

感想

若いころに7人連続で失恋したり、何人もの同僚や友人からの借金の申し込みを断り切れずに貸したらそのまま返してもらえずに気まずくなって疎遠になったりと、人間関係がうまくいかずにだんだん煩わしくなって、休日は一人で過ごすことが多くなってきました。

 

そんなこんなで若いころに比べると友人の数がかなり減ってしまいましたが、50歳独身、一人暮らしの自分としてはそろそろ将来の孤独死が頭をよぎるようになって、もう少し社会とのつながりを持ったり、友人を増やさねばと考えるようになりました。

 

そんなタイミングで偶然この本を読んで、今まで感じていた人間関係を築いていくことに関するわずらわしさやストレスが少し軽減できそうな気がしました。

 

まだまだ、休日は一人で本を読んでいるほうが気楽でよい、誰かと会うのは気が重いと考えてしまいますが、少しずつでも変わっていけたらと思います。

 

 

ゴーストハント 5 鮮血の迷宮 小野不由美 角川文庫

ゴーストハント5 鮮血の迷宮 (角川文庫)

あらすじ

長野県諏訪地方の山中に明治時代からある古い洋館で次々に起こる謎の失踪事件の解決を依頼され、国内外の名だたる霊能者や研究者が招集された。

 

洋館の中を調査しているさなかにも館にいる人間が一人、また一人と姿を消していく。

 

謎の増改築を繰り返して複雑な構造になった洋館の過去の秘密とは?また、そこに棲むたくさんの霊たちの正体とは?

感想

ファンの間ではシリーズ最恐との呼び声が高い本作ですが、文章におどろおどろしい雰囲気もなく、登場人物たちがライトノベルのようなユーモラスなやり取りをするので、たしかに凄惨なシーンはありましたが自分としてはそれほど恐ろしいと感じることはありませんでした。

 

小野不由美さんのホラー作品としては「残穢」や「営繕かるかや怪異譚」といった作品を読んだことがありますが、これらの作品のほうが本格的に恐ろしく、ホラー好きにはこちらのほうがお薦めです。

 

ただ、シリーズを通して主要な登場人物たちには謎も多く、伏線もいろいろ張られているので、ホラー初心者やミステリー好きの人にも楽しめる作品だと思います。

 

全7作品の5巻となり、主人公の女子高生麻衣の生い立ちや主要な登場人物の一人である謎の中国人リンの能力の一端がみられるなど少しずつ伏線の回収が始まってきました。

 

この物語には主に7人の主要人物がいて、それぞれが大変個性的な霊能者たちなのですが、シリーズ開始当初はお互いにいがみ合って仲が悪かったメンバーたちが、物語が進むにつれてお互いを理解し、危機が迫ればそれぞれの得意技を生かして協力し合うなど次第にいい関係になってきているのが僕はとても好きです。

 

これから残り6巻と7巻で伏線がどのように回収され、どんな結末を迎えるのかますます楽しみです。

 

 

 

護られなかった者たちへ 中山七里 宝島社文庫

護られなかった者たちへ

あらすじ

東日本大震災から四年後、ようやく復興しつつある好景気に沸く仙台市で拘束したまま飢え苦しませ、餓死させるという残酷な他殺体が発見される。

 

その残酷な殺害方法から担当刑事の笘篠は怨恨の線で捜査する。

 

しかし被害者は人から恨まれるとは思えない聖人のような人物で、容疑者は一向に浮かばないまま二体目の餓死死体が発見される。

 

二人の共通点を探っていくと、ある福祉保険事務所で同じ時期に勤務していたという過去が判明。

 

この場所でで何があったのか。

感想

貧困と格差、生活保護の受給問題を扱った社会派ミステリーです。

 

「法律と歪んだ信条が護るに値しない者を護り、護らなければならない者を見て見ぬふりをしている」

 

受給申請をごまかして不正に受け取ったり、親族の受給しているお金を横からかすめ取っていくような不届き者がいる一方で、本当に需給を必要としている人が国や他人に迷惑をかけたくないとか、生活保護を受けることは恥だと考えて申請をためらっている。

 

また、申請書類の量が膨大かつ複雑で、それだけであきらめてしまう人も。

 

申請をなかなか受理してもらえず、どんどん困窮して追い詰められていく登場人物たちを見て、胸が締め付けられ、やり場のない怒りやむなしさを感じる場面もありました。

 

一方で、貧しいながらもみんなで助け合って笑いながらたくましく生きていく姿に人との繋がり、絆、愛といった希望を感じることができる場面もありました。

 

中山七里の作品は以前「連続殺人鬼カエル男」とその続編を読んだことがあるのですが、この作品はサイコサスペンスと呼べるような凄惨な内容でしたが、今回読んだ作品はそれらとは全く毛色が違っていて切なくて悲しくて泣ける作品でした。

 

ほかの作品もぜひ読んでみたいと思いました。

 

 

大人気中華ファンタジー小説シリーズの「後宮の烏」が完結

後宮の烏7 (集英社オレンジ文庫)

僕が大好きだった大人気の中華ファンタジー小説後宮の烏」が7巻をもって完結してしまいました。

 

後宮の烏」は2018年から続く、累計発行部数100万部を突破した、集英社オレンジ文庫から発行されている人気のシリーズです。

 

中国王朝を思わせる国の宮殿の奥深くで繰り広げられる荘厳な物語で、妃でありながら夜伽をしない特別な妃・烏妃の寿雪が主人公です。

 

不思議な術を使い、呪殺から失せ物探しまで、何でも引き受けてくれるという烏妃のもとに、ある依頼をするために時の皇帝である高峻が訪れたことによって封印されていた過去の歴史の闇の扉を開いてしまうというものです。

 

「烏妃は一人でいなければならない」という先代の言いつけを守って後宮の奥深くで世話役の老婆と二人だけで生活していた寿雪に、物語が進むにつれて、彼女にとって大切な仲間が次第に増えていきます。

 

先代の言いつけを破ってしまった罪悪感と、大切な仲間たちを守りたいという思いの間で葛藤する寿雪がいとおしくなり、最初は本のカバーイラストの美しさに惹かれて衝動買いしただけだったのですが作品自体にどんどんはまっていきました。

 

また、王朝の中で繰り広げられる凄惨な政争とそれに伴い次々に現れる幽鬼や呪いといったおどろおどろしい話が多い中、宮殿の庭園の木々やそこに訪れる野鳥たち、移ろいゆく季節といった自然の情景描写が美しく、そこにも魅力を感じていました。

 

自分の中で勝手に10巻まで続くのだろうと思っていたので、7巻を書店で手にとって帯に「ここに完結!」と書かれているのを見つけた時にはとてもショックでした。

 

しばらくは寿雪ロスに陥りそうですが、また新しい小説との出会いを楽しみにしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

硝子の塔の殺人 知念実希人 実業之日本社

硝子の塔の殺人

2022年本屋大賞ノミネート作品です。

 

個人的にノミネート作品全作品読破を目指してきましたがようやく7作目です。

 

長野県の山奥の大富豪が建設した硝子館で次々に起こる密室殺人事件の謎にミステリーマニアにして男装の美人名探偵、碧月夜(あおいつきよ)が挑む!というミステリー作品です。

 

登場人物にミステリーマニアが何人も登場してくるので、作中にとにかくミステリー小説に関する知識がふんだんにちりばめられていて、ミステリー小説好きにはたまらないのではないでしょうか。

 

ミステリー小説の歴史や作家の知識、ジャンル分け、トリックの手法など、読むのは好きだけど、あまり詳しくない僕にはとても勉強になりました。

 

ストーリーも、年齢、職業、性格も様々な個性あふれる登場人物たちと、密室のトリック、読者への挑戦状、二転三転する事件の真相と、とにかくミステリーの王道という感じの作品で、はやく続きが読みたくて、仕事中も隙間時間を見つけては読んだりしていました。

 

そのため、500ページという長編でしたが、平日の2日間で読破することができました。

 

この作品の前に読んだ「残月記」が重たい作品で、なかなか読み進めることができず、休日を含んでも1週間かかったことを思うとえらい違いです。

 

それにしても、僕はそれほどミステリー好きとは言わないまでも、東野圭吾や、伊坂幸太郎湊かなえ宮部みゆきなど現代のミステリー作品もいろいろ読んできたので、それなりにミステリー小説については知っているつもりだったのですが、ミステリー好きの王道からはどうやら外れていたようです。

 

この小説の中で挙げられている海外の古典作品や名作、日本のミステリー作家の名作はほとんど読んでおらず、登場人物たちのミステリー談義にも全然ついて行けず、いまいちピンと来ないところもありました。

 

特に、綾辻行人の名作といわれ、その後のミステリー界に大きな影響を与えたという「十角館の殺人」がこの作品の中にたびたび引用されているのですが、読んだことがなく悔しく感じたので、ぜひ読んでみようと思いました。

 

この「十角館の殺人」が発売された1987年といえば僕は高校生で、この頃は赤川次郎の「三毛猫ホームズシリーズ」や「三姉妹探偵団シリーズ」を夢中で読んでいたのですが、この「硝子の塔の殺人」の中のミステリーオタクたちの口からは赤川次郎のあの字も出てきませんでした。

 

当時大ヒットし、発売するたびにベストセラーとなった流行作家のミステリー作品もミステリーマニアたちからすると本格派とは言えないのかもしれません。

 

昨年の本屋大賞ノミネート作品の中には本格ミステリーと呼べる作品は見当たりませんでしたが、今年はこの作品以外にも「六人の噓つきな大学生」と「黒牢城」という2作品がノミネートされていて、どれも面白かったので、どの作品も上位が期待できます。

 

特に「黒牢城」は直木賞をはじめ、いくつもの賞を受賞しているので、本屋大賞も期待できるのではないでしょうか。

 

僕の個人的ランキングでもこの「硝子の塔の殺人」は上位にランクインする作品となりましたが、本家の本屋大賞では果たして何位に入るのか楽しみです。