とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

「うそつき光秀」赤堀さとる(講談社)

ラノベ、アニメ界の巨匠あかほりさとるが描く新しい明智光秀です。f:id:kurakkaa:20200117111049j:plain

親に捨てられ天涯孤独な孤児として育った十兵衛は、不本意ながら戦場で死体から金目の物を剥ぎ取って銭に換えてその日暮らしの生活をおくっていた。

やがて、この世の身分制度の不合理さを嘆き、いつか「人の上下の無い世」を創ろうという志を立て、諸国を放浪する旅に出る。

数年の月日が流れたある日、ひょんな事から室町幕府で代々政所を務めた伊勢氏の生き残り伊勢貞良と出会い、夢の実現のための策を練り、源氏の名門土岐氏の流れを組む明智光秀と偽って世に出る。

やがて信長の下で大出世を遂げた光秀は、やっと手に入れた妻や子供達との幸せな暮らしを守るために嘘をつき通す事や、夢と現実とのギャップに悩む。

苦悩の果てにたどり着いた光秀の結論は?
本能寺の変の真相は?
全く新しい明智光秀の姿が見られます。

まず、明智光秀が実は最下層の身分の出身であり、自分の境遇に伴う理不尽さから「上下無き世」を創るという志しを持つという設定に斬新さを感じました❗
これは明智光秀が超有名な人物なのに前半生が謎に包まれているためにできることです。

次に新鮮に感じたのが、戦国時代の人々の身分や血筋に対する考え方が度々取り上げられているということ。
下克上の世とはいえやはり身分の上下は厳然として存在し光秀が源氏の名門を名乗る事がいかに重要かを強調し、その嘘がやがて光秀を苦しめ追い込んでいく事への伏線にもなっています。

嘘をつき通し、夢のためなら悪人にもなると誓って生きてきた光秀が信長の下で大出世を遂げ、その結果手に入れた妻や子供達との幸せな暮らしが心情にある変化をもたらし、上下無き世を創るという夢がやがて別の目的に変わっていく過程が興味深かったです。

謎に包まれている本能寺の変の真相はどの様に描かれているのか。
これもこの小説ならではの設定が伏線となっていて面白かったです。