とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

「首」北野武(角川書店)

北野武が描く初の長編歴史小説
全員悪人、曲者ばかりの本能寺の変です。f:id:kurakkaa:20200118125620j:plain

天下をほぼ手中にした織田信長は、長男の信忠に家督を譲るにあたって明智光秀羽柴秀吉徳川家康がいずれ必ず織田家にとって変わろうとするであろうと考え、三人の抹殺を計画する。
事前にその計画を察知した羽柴秀吉は光秀や家康と連携して信長を討とうとするが…。

家臣の事など道具としてしか見ておらず、いじめや虐待を繰り返し、邪魔になれば平気で殺そうとする傍若無人織田信長と、その信長を討つために表向きは協力するが裏ではそれぞれの思惑で行動する三人の曲者という構図や、略奪、強姦、殺戮等のバイオレンスなシーンが度々出てくるところは映画アウトレイジ(観てないけど)の北野武監督の色が出ているなと感じました。

その一方で、上方落語の祖との説もある曾呂利新左衛門がそれらの出来事を天下人となった豊臣秀吉に落語の新ネタとして披露しているという設定が斬新で、大河ドラマ「いだてん」でビートたけしが演じた古今亭志ん生を彷彿とさせました。

史実では本能寺の変の直後に直ちに毛利と和睦して中国大返しを決行し、光秀を討った秀吉の行動はまるではじめから知っていて以前から周到に準備していたとしか思えず、この小説に描かれているようなことが実際にあっても不思議ではないなと思いました。

戦国時代を舞台にした小説はたくさん読んできましたが、この作品は北野武の視点や設定が独特でとても新鮮に感じました。これからも独自の視点で戦国時代を舞台にした小説を書いてほしいです。