まず、大きな謎があり伏線やヒントがあちこちに散りばめられていて歴史小説というよりは、ミステリー小説として興味深くて面白かったです。
この作品では大きな謎が2つ出てきます。
また、作品のそこかしこにヒントや伏線が散りばめられていて、早く謎の真相が知りたくてどんどん先を読みたくなりました。
1つ目は作品の冒頭からずっと出てくる、日本の国土すら破壊するという「国滅ぼし」とは一体何なのか?
応仁の乱の最中に東軍の大将細川勝元は部下たちに大量の銅を集めさせます。
また、まむしの初代長井新左衛門の父である松波高丸に元寇の絵図を見せて「てつはう」などの武器が海外に存在することを教えます。
それ以来長井新左衛門や斎藤道三も大量の銅を集め続けます。
「国滅ぼし」とはてつはうの事なのか?それとも巨大な大砲なのか。
途中で少しずつヒントも出てきます。国滅ぼしを使うと美濃国だけでなく日ノ本そのものを破壊してしまう。とか、三國志の時代の中国で董卓が使って数百年間も混乱が収まらなかったなど。
ここで、大砲だけで日本を破壊出来るか?とか、三國志の時代に大砲なんてあったのか?といった疑問が出てきてますますわからなくなってきます。
はたして「国滅ぼし」とは一体何なのか?
とても興味深かったです。
二つ目の謎は、前半の主人公の長井新左衛門が途中で何者かに殺害されるのですが、その犯人は誰なのか、動機は何なのかということです。
実は実行犯はすぐに判明するのですが、実行犯を犯行に導いた黒幕がいて、犯行動機を与えた人物が誰なのかが謎となっていてそれも気になってどんどん読めました。
父である長井新左衛門の死後に斎藤道三に突如亡霊が見えるようになることや、殺害事件で唯一生き残ったが記憶を失ってしまった家臣が知る真実は?などヒントや伏線があちこちに散りばめられています。
そのすべての謎が解けた後のクライマックスが斎藤道三と斎藤義龍が激突した長良川の戦いです。
こちらは歴史小説らしい迫力ある戦の描写で読み応えがありました❗
他にも当時の物流や貨幣経済の仕組みなどにもけっこう詳しく触れられていて、実はそれ事態が伏線やヒントになっていたりもします。
たくさんの歴史小説を読んできましたが、「まむし三代記」は、またひと味違った印象深い作品でした。