去年「楽園のカンヴァス」という小説に出会って以来原田マハさんの小説にハマっています。
原田マハさんの小説にはハズレというものがなくて、どの作品も冒頭から物語に引き込まれて一気に読んでしまいます。
この「アノニム」という作品も同じく冒頭から引き込まれた作品でしたが今まで読んできた原田さんの作品とはテイストが違いました。
まるで007のようなスパイ映画の要素が満載で、二十世紀アメリカの現代美術の巨匠ジャクソン・ポロックの幻の絵画をめぐってアート義賊窃盗団アノニムと悪の組織が暗躍して駆け引きを展開するというストーリーです。
学生運動で混乱真っ只中の香港を舞台にサザビーズのオークションが開催され幻の絵画をどちらがいくらで落札するのか、ドキドキハラハラします。
また、シリアスな展開の一方、香港で恵まれない環境の中、アートで世界を変えたいと夢見る少年とアノニムの漫才のようなやり取りが笑えて面白かったり、時に挫けそうな彼を励ます言葉にホロッときたりして読みごたえありました✨
現代アートが誕生した歴史的背景やジャクソン・ポロックの画風が生まれた経緯などにも触れられていて知的好奇心も刺激してくれます。
「どうせ開くはずがないと、閉ざされたドアをノックもせずに終わってしまうやつには、世界を変える力はない。けれど、ひょっとしたらこのドアはほんの少しでも動くかもしれないと、とにかくノックしてみるやつには、閉ざされたドアを開ける可能性と力があるはずなんだ。」
アノニムのリーダーのジェットが香港の少年張英才に贈った言葉が胸に響きました❗