「最悪の将軍」は徳川幕府5代将軍徳川綱吉を主人公にした歴史小説です。
徳川綱吉と言えば悪法と言われる生類憐れみの令を制定したり、老中を遠ざけて柳沢吉保といった側用人を重く用いたなど、現代では評価の低い将軍として有名ですが実際のところはどうだったのか、果たして本当に最悪の将軍だったのか?
作者の朝井まかてさんは江戸時代を舞台とした歴史小説や時代小説を多く手がけていて、幕末から明治にかけて活躍した実在の歌人を主人公にした「恋歌」で2014年に直木賞を受賞しています。
また、2017年には葛飾北斎の娘を主人公にした「眩」という作品がNHKでドラマ化されました。
関ヶ原の戦いから80年、戦国最後の戦である大坂夏の陣からも65年たった17世紀末。
未だに殉死や刃傷沙汰などの戦国の気風が残っている時代に5代将軍に就任した徳川綱吉は武士達の意識を平和な時代に則したものに変えていこうと文治政治を行い改革を次々に断行します。
その前半は天和の治と呼ばれ8代将軍徳川吉宗が参考にしたほどだということです。
しかし命への慈しみを人々の心に養うことで、秩序に満ちた世を開くという目的で制定された生類憐れみの令は、人よりも犬猫を大事にせねばならぬのかと民衆から心得違いをされます。
また、赤穂浪士の討ち入り、大地震や富士山の噴火などの災害
が続き、将軍の不徳だ、最悪の将軍だと言われ激しい挫折感を味わいます。
徳川綱吉は本当に最悪の将軍だったのか?政治のトップに立つものの孤独感がよくわかるいい作品だと思いました✨