とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

「銀閣の人」門井慶喜(角川書店) 1800円+税

銀閣の人」は銀閣寺を築き日本文化の原点とも言われる東山文化を牽引した足利義政の生涯を描いた作品です。

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戦国時代の到来のきっかけとなった応仁の乱を招いた政治家として無能のレッテルを貼られ、妻の日野富子に頭が上がらないダメ将軍として現代でもイメージが良くない室町幕府8代将軍足利義政

しかし、その一方で彼は当時右に出るものがいない程の教養を持つ超一流の文化人という一面を持っていました。

そして現代まで脈々と続く日本建築のスタンダードである書院造りや畳を敷いた四畳半を発明しました。

現在、国宝として京都の銀閣寺(慈照寺)に現存する東求堂。その中に残る原点の部屋「同仁斎」を足利義政が造り上げるまでの一大プロジェクトを描いたのがこの物語です。

東山に銀閣寺を築き、「政治で負けても、文事で勝つ」という強い想い。そこに至るまでの間にどの様な出来事があったのか、どの様な想いがあったのか。

祖父で金閣寺(鹿苑寺)を建てた足利義満に対する対抗心、くじで選ばれて恐怖政治を行ったために暗殺された父、足利義教に対する想い。

また、経済感覚に優れ政治家としても一流で女将軍と呼ばれた妻の日野富子に抱く愛憎、酒に溺れ母親の人形のように育ってしまった息子で9代将軍の足利義尚への悔恨。

家族や弟との確執や経済的困難にぶつかりながらも、連歌の宗祇や茶の村田珠光といった当時一流の文化人の力を借りながら築き上げた東山文化。

この作品を読んでまた銀閣寺にいきたくなりました。その時には是非、東求堂とその中にある同仁斎も見て、足利義政を感じてみたいと思います。

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