とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

「ファーストラヴ」島本理生(文藝春秋) 1600円+税

第159回直木賞受賞作品です。

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実は2018年の11月にこの本を買って、すぐに読んだと読書アプリに記録が残っているし、本棚にきっちり収まっているのですが、とんと内容が思い出せず、今回映画化されたということで再読してみました。

アナウンサー志望の女子大生聖山環菜が採用試験を受けた直後に父親を刺殺。親子の間に何があったのか?

臨床心理士の真壁由紀と弁護士の庵野迦葉が事件を追っていくと、次第に聖山家の闇が見えてくる。

あらためて読んでみると、性的虐待という家庭の闇をあつかったとても重たい作品なのですが、登場人物たちの設定や心理描写、心の変化していく過程が面白く、思わず感情移入してしまい物語に引き込まれました。

また、ミステリー的な要素も多くあるので、早く答えが知りたくてどんどん読み進めました。物語が進むにつれて謎が解けたり伏線の回収がきっちりあってその点も面白かったです。

そして終盤の法廷での裁判のやり取りもヒリヒリするような緊張感が伝わってきて胃がキュッとなりました。

タイトルだけ見ると恋愛小説なのかなと思ってしまいますが、「ファーストラヴ」というタイトルにも悲しくて切なくて深い理由があって、それを知るとじわっと涙が滲んできました。

「愛情ってなにか分かる?私は、尊重と尊敬と信頼だと思ってる」

この主人公で臨床心理士庵野由紀が聖山環菜に言った言葉が特に印象に残っているし、物語の大きなテーマだと思いました。

なぜこんな面白い作品を失念していたのか本当に不思議です。

映画はどの様に描かれているのか是非観たいと思います。