とっく~ブログ 

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「習近平のデジタル文化大革命~24時間を監視され全人生を支配される中国人の悲劇」川島博之(講談社+α新書) 840円+税

この本のタイトルの細かいところをよく見ないで購入したので、読む前までは米中貿易戦争を受けて、Googleをはじめとしたアメリカの巨大IT企業GAFAに、HUAWEIを代表とする中国の巨大IT企業BATHがどの様に対抗していくのかといった内容の本だと思っていました。

ところが読み始めてみて何か違和感を感じたのでもう一度タイトルをよく見ると中国の監視社会について書かれたものでした。

米中の企業同士が競いあってテクノロジーがどの様に発展し、AIや5G、自動運転の車が実現して未来の社会がどの様に変貌していくのかというのが知りたかったのですが、世界情勢について、これはこれでなかなか興味深い内容の1冊でした🎵

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1,中国の経済成長のスピードは確実に鈍化している。

2,経済発展の恩恵が受けられず就職できない若者たちが不満を募らせている。

3,都市と農村の格差が広がり、都市民は農民を虐げている。

4,習近平は反汚職キャンペーンの名のもとに敵対勢力を排除し、関係者の恨みをかっている。

習近平政権はこれら国民の不満を完全に押さえ込むために「デジタル文化大革命」を推進して徹底的に国民を監視するシステムを造り上げているということです。

そして、政府に都合の悪い情報を封鎖し、独裁が強化されることによって中国は文化鎖国時代に突入しているということです。

しかし、海外情報を遮断し、政府批判を絶対に許さないような社会で新たなイノベーションが生まれるだろうか?いや、絶対に生まれない、と著者は主張しています。

10年もすれば中国は世界から文化や文明、技術の面でも取り残され、世界から遅れた社会とみなされるようになり、矛盾が露呈されるだろうとのことです。

結論としては少子高齢化が急速に進む中国が今後、政治的にも経済的にも「帝国」になることはないであろう。内需が弱く、輸出依存の脆弱な構造になっている中国は、いわば「砂でできた巨人」にすぎないと、フランスの歴史人口学者の言葉を引用しています。

その先にあるのは国の混乱と共産党の一党支配の終焉、そして国家の分裂であろう。それが中国史の基本であると。

自分の感想としては、この本の内容を全て鵜呑みにするのは危険のような気がしました。

コロナ禍の前に出版された本なので、今の中国がどうなっているのかはわからないですし、最近の中国は文化や芸術の分野の振興に力をいれているという話も聞きます。

実際、去年読んだ「三体」という中国のSF小説は凄く面白かったです。

中国の動向は政治的にも経済的にも日本にも大きな影響を及ぼすと思うし、ひいては自分にも何か影響があるかもしれないのでこれからも中国に関する本を沢山読んでアンテナを張っていたいと思います。