とっく~ブログ 

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2021年本屋大賞ノミネート作品 自分的に好きなランキング

先日、「八月の銀の雪」を読了して2021年本屋大賞ノミネート作品をすべて読み終わりました。

 

本屋大賞にノミネートされた10作をすべて読んだのは初めてのことなので、達成感を感じて自分としてもよくできたなと、ちょっと感動しています。

 

今年はコロナ禍ということもあり、休日もあまり外出もせずに読書をする時間が増えたということもありますが、すべての作品を読んでみたいという好奇心とモチベーションも高かったので丸半年かかりましたが、全作品を読むことができました。

 

あと、今年ノミネートされた作品は上中下巻みたいな複数買わなければいけないほどの長編もなかったのでお財布にも優しく買いやすかったというのもあります。

 

今年ノミネートされた作品を俯瞰してみての全体的な第一印象としては、良いとか悪いということではないのですが、重厚な歴史小説やミステリー小説がなかったなと思いました。

 

昨年の4位の「ノースライト横山秀夫(新潮社)とか、5位の「熱源」川越宗一(文芸春秋)のような渋い中年の男性が登場する作品があってもよかったなと個人的には思いました。

 

今年のノミネート作品の大きな特徴としては、10作中7作が女性作家の作品ということです。ちなみに昨年は3作だったので、ただの偶然だとは思いますが、渋い中年の男性が主人公の作品がなかったのはこういう理由もあると思います。

 

今年の「52ヘルツのクジラたち」の大賞受賞で本屋大賞は7年連続で女性作家の作品が1位をとっているので書店員さんたちが売りたいと思う作品は女性作家が書いた作品が多い傾向にあるのかもしれません。

 

ちなみに今年の本屋大賞の順位を振り返ると、

 

  1. 「52ヘルツのクジラたち」 町田そのこ 中央公論社
  2. 「お探し物は図書室まで」 青山美智子 ポプラ社
  3. 「犬がいた季節」 伊吹有喜 双葉社
  4. 「逆ソクラテス」 伊坂幸太郎 集英社
  5. 「自転しながら公転する」 山本文緒 新潮社
  6. 「八月の銀の雪」 伊与原新 新潮社
  7. 「滅びの前のシャングリラ」 凪良ゆう 中央公論新社
  8. 「オルタネート」 加藤シゲアキ 新潮社
  9. 「推し、燃ゆ」 宇佐見りん 河出書房新社
  10. 「この本を盗む者は」 深緑野分 KADOKAWA 

     

となっています。

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2021年本屋大賞ノミネート作品 



こうやってあらためて見てみると、リアルな現実を描いた作品が多いですね。

 

エンタメ小説と言えるのは巨大隕石が地球に衝突するパニックを描いた「滅びの前のシャングリラ」とファンタジー色が濃い「この本を盗む者は」くらいかも。

 

他の作品は芥川賞を受賞した「推し、燃ゆ」や直木賞の候補になった「オルタネート」を筆頭にエンタメ小説と言うよりは純文学に近い作品が多かったように思います。

 

この傾向がたまたまなのか、来年以降も続くのか見ていきたいです。

 

それでは、僕が個人的に好きな作品のランキングを発表したいと思います。

  1. 「52ヘルツのクジラたち」 町田そのこ  中央公論新社
  2. 「八月の銀の雪」 伊与原新 新潮社
  3. 「お探し物は図書室まで」 青山美智子 ポプラ社
  4. 「犬がいた季節」 伊吹有喜 双葉社
  5. 「滅びの前のシャングリラ」 凪良ゆう 中央公論社
  6. 「オルタネート」 加藤シゲアキ 新潮社
  7. 「自転しながら公転する」 山本文緒 新潮社
  8. 「推し、燃ゆ」 宇佐見りん 河出書房新社
  9. 「逆ソクラテス」 伊坂幸太郎集英社
  10. 「この本を盗む者は」 深緑野分 KADOKAWA

こうやって並べてみると、結構大賞のランキングと重なるなと思いました。「八月の銀の雪」と「逆ソクラテス」が大きく違うくらいであとは大体同じような感じなので、書店員さんたちと感覚は似ているのかもしれないと思いました。

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左から自分が好きなランキング

1位の「52ヘルツのクジラたち」はノミネート作品が発表された直後の1月末に、一番最初に読んだのですが、2020年大賞を受賞した「流浪の月」に似ているなという感想を持ったし、虐待やトランスジェンダーといった重たいテーマを扱いながらも心温まるストーリーで、10作すべて読んだ後も一番好きだという感想は変わりませんでした。

 

2位の「八月の銀の雪」はとっくに結果が発表された7月に一番最後に読んだのですが、人生に迷い悩む登場人物たちが科学の知識からヒントを得て前向きに生きていくきっかけを作っていくという内容が自分が大好きな好きなストーリーだったので、この順位になりました。

 

3位の「お探し物は図書室まで」も本をきっかけに人生に挫折を経験して悩む人たちが偶然訪れた公民館の図書室の司書に選んでもらった本をきっかけに、前向きに生きていくという大好きなストーリーで、「八月の銀の雪」を読むまでは2位だったのですが、後に読んだもののほうが印象が濃いというのもあって、甲乙つけがたいのですが、3位にしました。

 

4位の「犬がいた季節」は三重県四日市市の、とある高校に住み着いた犬と代々世話をする係となった高校生たちの物語ですが、昭和から平成に移っていく時代がちょうど自分の高校生から社会人になるという時代と重なっていてグッとくるものがりました。

 

5位の「滅びの前のシャングリラ」は、巨大隕石が一か月後に地球に衝突し人類が滅びることが判明したところから始まるパニック小説ですが、善人も悪人も等しく滅びるというときに、暴力や殺人に善悪はあるのか、とか、最後の瞬間にどこで誰と過ごすのかなど考えさせられる内容で、さすが昨年大賞をとった「流浪の月」の作者だなと思いました。

 

6位の「オルタネート」は、マッチングアプリに対する3人の三者三葉の接し方が興味深くて、今どきのストーリーではあるけれど、とても深い内容だと感じました。いろんな賞にノミネートされるだけのことはあるなと思いました。

 

7位の「自転しながら公転する」は、恋愛、仕事、親の介護といった問題をいっぺんに抱えてしまった普通のアラサーOLが主人公の物語ですが、いろいろな問題を抱えながらも一生懸命生きている姿を、秒速465メートルという高速で自転しながら、秒速30キロで太陽の周りを公転している地球に例えているのがとても面白いと感じました。

さらにその勢いのまま天の川銀河を駆け抜けて二度と同じ場所には帰ってこないという事実を人生に例えているのが強く印象に残っています。

 

8位の「推し、燃ゆ」は、芥川賞を受賞した作品ですが、もともとあまり純文学系が好きではないからか、芥川賞の候補になるような作品を読んで面白いと思ったことがあまりないので、この作品もあまり期待していませんでした。それでも、予想よりは面白いと思ったのでこの順位にしました。

 

9位「逆ソクラテス」は、人間にとって大事な道徳的なことを忘れた大人を子供の目線で見て皮肉的に描いた作品ですが、僕としてはあまり印象には残りませんでした。「重力ピエロ」とか、「ゴールデンスランバー」とか10年も前に読んだのに今でも強く印象に残っている作品もあるのですが、この作品はなぜか僕には響かなかったようです。

 

10位「この本を盗む者は」は、今年の本屋大賞の中で唯一のファンタジー小説だと思うし、、ミステリーの要素もあるのですが、女子高生が主人公で、あまり自分と共通点がないのと、メルヘンチックな世界観がアラフィフのおじさんにはあまり刺さらず、この順位となりました。

 

こうやって作品をすべて読んであらためて自分で好きな順にランキングにしてみるのは結構楽しかったです。

 

他の賞のノミネート作品や来年の本屋大賞でもぜひやってみたいと思います。