夏の3大文庫フェアの一つである角川文庫のカドフェス。
黄色と黄緑のイメージカラーが特徴的で、書店に入ると真っ先に飛び込んでくるほどよく目立ちます。
プレゼントも集英社のナツイチや新潮文庫の100冊に比べるとかなり豪華な賞品で、ホテルのペア宿泊券や映画のチケットがもらえるだとか、とびぬけています。
僕は賞品が目当てではないので応募したことはないですが、これを目当てにたくさん本を買って読書の習慣を作るきっかけになってほしいです。
カドフェス2021の小冊子に紹介されている作品を数えてみると94作品ありました。
集英社文庫のナツイチは78作だったので、それよりもかなり多いです。
その94作品の中で僕が読んだことがある小説は全部で17作品でした。
ナツイチでは5作品しかなかったので、カドフェスのほうが読んだ本の割合は高かったです。
とはいえ、17作品の中には読んでからかなりの年月が経過して脳内の風化が激しい作品が半分くらいあったので、ここ2・3年のうちに読んで、比較的記憶に残っている作品8作を2回に分けて紹介したいと思います。
1「アノニム」 原田マハ
僕が大好きな作家、原田マハさんが描くアートミステリーです。
原田マハさんのアートミステリーといえば、「楽園のカンヴァス」や「暗幕のゲルニカ」はじめ、最近発売された「リボルバー」など、絵画や画家に関する謎を解くといったものが多い印象なのですが、この作品はそれらとは一線を画した内容で、正義(?)の窃盗団が悪の組織をぎゃふんと言わせる痛快な作品です。
現代アートに関する知識も学べる面白い作品でした。
昭和から平成に代わるころの広島県を舞台に暴力団同士の抗争とそれを阻止しようと奮闘する刑事たちの物語です。
登場人物が一筋縄ではいかない男たちばかりで、刑事もただの善人ではなく、清濁併せ吞む人物たちで、一方のヤクザたちも極悪人ばかりではなく、仲間のためなら自己犠牲もいとわない熱い男たちが何人も登場し、読んでいて胸が熱くなりました。
3「凶犬の眼」 柚月裕子
「孤狼の血」の続編です。
前作で新米の刑事だった日岡が成長し、一人前の刑事になった数年後の話です。
暴力団同士の抗争で、敵対する組の幹部を殺害し逃亡中の男と、日岡の奇妙な友情を描いたもので、この作品も前作に劣らず胸が熱くなる重厚な作品でした。
4「ナミヤ雑貨店の奇蹟」 東野圭吾
いわずと知れた日本が誇る大人気ミステリー作家東野圭吾さんが描くファンタジー的要素が強いミステリー小説で、映画化もされました。
現在と過去が交差する不思議な、かつては雑貨屋だった空き家に、悪事を働いて逃げ込んだ少年たちと、過去の人たちが手紙を通じて交流する物語です。
悩みの相談を過去から送ってくる人達に真剣にアドバイスの返事を書いているうちに悪事を働いた少年たちの心にある変化が生じていく過程がとても感動的でした。
また、ナミヤ雑貨店の主人の切なくて悲しい過去が泣けました。
以上、カドフェスの小冊子の中で読んだことのある作品の中で最近読んでよく覚えている小説を4つ紹介しました。
読んだけど、かなり前なのであまり覚えていない作品の中にも映像化されたほどのベストセラーになった名作がかなりありました。
再読ではなくてもそれらの作家さんの別の作品もいずれ読んでみたいです。