とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

2021年7月に読んだ本

コロナウイルスがどんどんデルタ株に置き換わり、東京の感染者がついに4000人を超える中、もめにもめた東京オリンピックがついに開幕した7月。

 

連日の猛暑で休日もクーラーの効いた部屋に引きこもりがちの生活を送っていましたが、結局読破できた本は6冊に終わりました。

 

7月は本屋大賞直木賞このミステリーがすごい!といった賞を受賞したりノミネートされた作品を中心に読みました。

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7月に読んだ本

ハードカバーで分厚く重たい本ばかりで、500ページを超える長編が2冊、そのほかの本もほとんどが300ページを超えるものばかりで、ただでさえ遅読なのに1冊読むのにかなり時間がかかってしまい、いつもの月に比べて読めた本の冊数も少なくなってしまいました。

 

しかし、どの作品も有名な賞を受賞したりノミネートされて話題になった作品だけあって読みごたえがあり、心に響くものばかりでした。

 

心が温まりほろっと泣ける作品から、どうしようもなく残酷でハードなものもありましたが、多様な作品を読むことで、自分も知識や教養を得たり、心に栄養をもらったりと成長できたのではないかと思います。

 

1「八月の銀の雪」 伊与原新 新潮社

 

今年の本屋大賞にノミネートされて6位になった作品です。

 

人生の挫折を味わい、心に傷を負ったり悩んだりしている人が、偶然出会った科学の専門家との交流から立ち直るきっかけやヒントを得て、前向きに生きていけるようになるという、元気をもらえる5つの短編集です。

 

心に刺さるいい話ばかりで、僕の中では本屋大賞第2位です。

 

 

2「たかが殺人じゃないか」 辻真先 東京創元社

 

このミステリーがすごい!ほか、3冠を獲得した作品です。

 

昭和24年の、まだまだ戦災からの復興途上の名古屋が舞台のミステリーです。

 

密室殺人やアリバイのトリックなど、ミステリーのまさに正統派といえる作品です。

 

名古屋空襲の描写や焼け野原となった名古屋の様子など、作者の実体験による当時の様子が克明に描かれていて、歴史の勉強にもなりました。

 

また、つらい戦争の時代が終わり、戦後の民主主義が叫ばれて六三三制や男女共学など急激な教育制度改革による環境の激変に翻弄される当時の思春期の少年少女たちの心の戸惑いも見所です。

 

 

3「白鳥とコウモリ」 東野圭吾 幻冬舎

 

殺人事件の加害者と被害者の両方の家族に焦点を当てた本格ミステリーです。

 

加害者家族に対するネットでの誹謗中傷、昼夜関係なしに押し掛けるマスコミの取材、近所や会社、同僚からの厳しい目。

 

また、被害者家族に対しても同情だけではなく理不尽な誹謗中傷や差別を受けることがあるという現実。

 

30年以上前に愛知県で起きた殺人事件と、現代の東京で発生した殺人事件とのつながりは?自首してきた男は本当に犯人なのか?

 

二転三転する事件の真相が早く知りたくて、500ページを超える大作でしたが、どんどん先に進むことができました。

 

 

4「星落ちて、なお」 澤田瞳子 文藝春秋

 

つい先日発表された第165回直木賞を受賞した作品です。

 

幕末から明治にかけて活躍した天才絵師河鍋暁斎の娘で、同じく明治から大正にかけて活躍した絵師河鍋暁翠を主人公にした作品です。

 

偉大だった父を超えることができずに足搔き続ける暁翠に、さらに追い打ちをかけるように何かといちゃもんをつけてくる腹違いの兄と、借金を繰り返しいつまでもふらふらしてる弟に悩まされます。

 

西洋画がもてはやされ日本画が廃れていく時代において自分はどんな絵を描けばいいのか悩む暁翠がたどり着く境地とは。

 

女性に良妻賢母が求められた時代にシングルマザーとして仕事に生きた女性と、彼女にかかわる様々な家族の姿を描いた心に残る作品です。

 

 

5「テスカトリポカ」 佐藤究 角川書店

 

「星落ちて、なお」と共に第165回直木賞をダブル受賞した作品です。

 

南米の麻薬カルテルインドネシアイスラム過激派組織、中国の闇社会の組織、日本の暴力団など、これらの組織が活動資金を得るために営む闇の商売である麻薬の密売、臓器売買、幼児売買春。

 

これらがネットワーク化されて世界中に広がる闇の資本主義を形成しているという現実。

 

アステカ王国で行われていたという神に生贄の心臓を取り出してささげる儀式、むごたらしい手段で行われる拷問、幼児の臓器売買、暗殺、市場を独占するために行われる敵対勢力への殺りくなど、暴力の見本市のような内容で、読むのがハードでした。

 

どこまでが本当で、どこからがフィクションなのかわかりませんが、こんなことが世界のどこかで現実に起こっているのかと思うと暗澹たる気持ちになりました。

 

しかし、けして絶望だけではなく暗闇の先にかすかな希望の明かりも見える内容だったので、途中で読むのを放棄しようとは思いませんでした。

 

僕は本を読む大きな利点の一つは物事を多角的に見ることができるようになることだと思っていることなのですが、この作品は世界の政治経済を見るときの新たな視点を与えてくれたと思いました。

 

 

6「スモールワールズ」 一穂ミチ 講談社

 

残念ながら受賞は逃しましたが、第165回直木賞候補作になった作品です。

 

別々の作家さんがそれぞれ作品を持ち寄って1冊の本にしたんじゃないかと錯覚するほど作風も趣も違う6つの作品からなる短編集です。

 

明るい話、暗い話、手紙のやり取りだけで進む話、ホラーのような怖い話など、小説の書き方の具体例が学べる教科書のような作品です。

 

全く別々の作品なのですが、匂わせ程度に少しずつつながりがある話もあって、同じ時間と空間で進むストーリーなのだと感じます。

 

ちなみに僕は個人的に第2章の「魔王の帰還」という話が笑って泣けて一番好きでした。

 

 

7月はハードカバーの分厚い小説ばかり読みましたが、1冊1冊に時間をかけすぎて少々疲れたので、8月は文庫の小説や教養系の新書など、持ち運びが楽でちょっとした隙間時間にも読める本を選んで、もうちょっと読破する本の数を増やしたいと思います。

 

8月はどんな本に出合えるのか楽しみです。