とっく~ブログ 

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新 謎解きはディナーのあとで 東川篤哉 小学館

2011年の本屋大賞を受賞し、その後ドラマ化、映画化され大ヒットした作品の9年ぶりの新作です。

 

新 謎解きはディナーのあとで

巨大複合企業「宝生グループ」総帥の一人娘でありながら国立署の刑事である宝生麗子、宝生家に仕える執事として麗子に寄り添う天才的洞察力の持ち主の影山、「風祭モータース」の創業家の御曹司で麗子の上司である風祭警部という主要キャストに加えて今回から新キャラクタード天然キャラの新米刑事若宮愛里が加わりました。

 

この作品の魅力はなんといっても個性的な4人のキャラクターが織りなす水戸黄門のドラマのように事件が起きるたびに繰り返されるパターン化された軽妙なやり取りです。

 

この作品は連作短編形式で5つのエピソードが収録されているのですが、事件が起こるとまず、麗子と愛里が現場に駆けつけて、素人でもできそうな推理をしているところに爆音を轟かせながら愛車のジャガーで風祭警部がやってきて、先に来ていた二人の素人のような推理をいかにも自分が初めて考えたようにやって見せて、忖度した二人の部下が感心していい気持ちになるというくだりがまずあります。

 

そのあとに場面は変わって、刑事の仮面を脱いでセレブお嬢様に戻った麗子が、大邸宅でディナーをとっているときの麗子と執事影山のやり取りです。

 

影山は天才的な探偵としての能力持ち、現場を見たわけでも関係者から直接話を聞いたわけでもないのに麗子から詳しく話を聞いただけでたちまち謎を解き明かして事件を解決に導くという離れ業をやってのけます。

 

しかし、慇懃無礼な執事影山は麗子から話を聞き終わるたびに「お嬢様の目は節穴でございますか?」とか、「寝言は寝てらっしゃるときにおっしゃっていただけますか?」などと丁寧な口調で無礼なことを言って、一瞬の間の後に麗子が激怒するという二つのパターンがセットになっていて、この前半と後半の軽妙なやり取りが面白くて大好きです。

 

主人公の宝生麗子は、刑事の時は大企業の総帥の一人娘という身分を隠して愛嬌はあるがダメな上司とド天然キャラの後輩の間に立ってしっかり者を演じますが、影山の前ではわがままなセレブお嬢様として素の自分を見せられるという信頼関係がしっかりあってその二人の関係がとても好きです。

 

おそらく二人はお互いに惹かれ合っていると思われます。

 

今は匂わせる程度ですが今後の二人の関係も気になります。

 

もっと近づいてほしいという思いもありますが、それではキャラの魅力や軽妙なやり取りが死んでしまいそうなのであまり前面に出てほしくないような…。

 

この後続編があるのかはわかりませんが個人的には続編を熱望します。