歴史小説の巨星、司馬遼太郎が描く、とにかく明るい豊臣秀吉です。
派手な演出、パフォーマンス、サプライズ、が大好きで、人を喜ばせるにはどうすればいいか、そればかり考えて、人たらしの天才とまで呼ばれるようになり、ついには天下を統一してしまった男。
読んでいてこちらも元気がもらえる、そんな豊臣秀吉です。
平成に入ったあたりからの傾向なのか近頃は腹黒で陰湿、謀略好きな男に描かれ、中には本能寺の変の黒幕として描かれたりすることまである豊臣秀吉ですが、昭和の時代に描かれた司馬遼太郎が描く豊臣秀吉は太陽から生まれてきたのではないかと思われるほどに明るく誠実で敵であってもなるべく殺したくないという優しい男です。
最下層の身分から織田家家臣となった秀吉は、自分が主君の信長に気に入ってもらうためにはどうすればいいかということだけを考えています。
信長はどんな問題を抱え、何を欲しているのかを頭をフル回転させて考えてほかの誰よりも先回りし提案し、問題を解決していきます。
その姿勢が柴田勝家や佐々成政などに批判的に見られたりもし、時には信長に「出すぎじゃ!」と折檻されることもありますが、丹羽長秀や前田利家など、好意的に見てくれる人もいて信長にも次第に認められて出世していきます。
また、織田家の同僚や上司に気に入ってもらうためや、敵対する相手を降伏させるためにも誠実な態度で接し、ときにはパフォーマンスや派手な演出をして相手の心をつかみます。
人を喜ばすにはどうすればいいのか、相手の心をつかむためにはどうすればいいのかを考え続けた秀吉の姿勢が、やがて実を結び「この人のためならば」と心を動かされた優秀な人材が彼のもとに集まってきます。
また、敵であっても信長に降伏すると絶対に殺されるから嫌だけれど秀吉ならば命を助けてくれるどころか厚遇してくれるということで進んで降伏することで血を流すことなく領地を拡大していくことができます。
現代のビジネスにも大いに参考になるこの作品は、人を動かすとはどういうことなのか組織論といったビジネス書としても大いに参考になるので会社などの組織で人に支持する立場の人にはぜひ読んでほしいです。