とっく~ブログ 

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前田利家 戸部新十郎 光文社文庫

戦国武将、前田利家の生涯を描いた長編小説です。

前田利家(上) (光文社文庫)

前田利家(下) (光文社文庫)

作者は前田利家とは縁の深い石川県七尾市出身の作家、戸部新十郎です。

 

僕も石川県出身ということもあり、前田利家は戦国武将の中でも一番好きなので、前田利家を主人公にした小説は今までにもいくつか読んできたのですが、この作品が一番いいと思いました。

 

今まで読んだ作品の中には、細かいんだけれどもまるで歴史の教科書に出てくる年表のように利家の事績を追っているだけにしか見えないような、小説じゃなくて役所の記録文書か!と突っ込みたくなるような作品や、タイトルが前田利家なのに、読んでみたら織田信長豊臣秀吉のことばかり書かれていて主人公のはずの前田利家があまり出てこないという詐欺まがいの作品もあり、あまり満足できませんでした。

 

しかし、この作品は利家と、彼と深いかかわりがあった武将たち、織田信長豊臣秀吉徳川家康柴田勝家佐々成政などの重要人物との関係や有名なエピソードもしっかり描かれていたし、妻のまつとの会話やエピソードもちゃんと描かれていて、やっと満足ができる作品に出会えたと思いました。

 

この作品で特徴的なのが、物語がまだ二割ほどのところで本能寺の変が起こり信長が死んでしまうことです。

 

今まで読んだ利家の生涯を描いた作品ではどれも本能寺の変を境に前半と後半に分かれているものが多いのですが、この作品では信長の死後に前田利家が加賀100万石の礎を築いていく過程に多くのページを割いています。

 

特に賤ケ岳の戦いや、能登の支配を盤石にした石動山の焼き討ち、秀吉に味方したことで佐々成政を倒して越中の領土が利家に与えられる経過を丁寧に描いています。

 

作者が能登半島七尾市の出身ということもあり、特に思い入れが強かったのかもしれません。

 

僕も前田利家に関しては特に関心があるので、これからも書籍を読んだりゆかりの地を巡ったりして追っていきたいと思います。