今年、2022年の本屋大賞ノミネート作品です。
作家さんや本屋さん、出版業界の応援も兼ねて、一昨年、昨年と2年続けて本屋大賞ノミネート作品はすべて読破しているので、今年も全作品を読破して自分なりのランキングと大賞を決めたいと思っています。
とはいえ、今年エントリーされた10作品のうち、「スモールワールズ」「同志少女よ敵を撃て」「黒牢城」の3作品は直木賞候補作品としてすでに読了済みなので、残りは7作品となります。
たしか7年連続で、女性作家の作品が大賞をとっていますが、今年はだれが大賞をとるのか、今からワクワクしています。
どの作品から読むか順番は決めていなかったのですが、何となくミステリーが読みたいと思ったので、この作品を手に取ってみました。
あらすじ
新進気鋭のIT企業「スピラリンクス」の最終選考に残った六人の大学生。
一か月後に最高のチームを作り上げ、ディスカッションをし、結果次第では全員に内定が出るという。
六人は仲を深め合い、全員で内定を勝ち取ろうと誓い合うが、本番直前に課題が変更され「六人の中から一人の内定者を決める」ことに。
仲間だったはずの六人は一転して一つの椅子を奪い合うライバルとなる。
採用試験の当日、六通の封筒が発見され、その中にはそれぞれを弾劾した告発文と写真が同封されていた。
封筒を準備した犯人はだれなのか、その目的は?告発文に書かれていた彼らの罪とは?
感想
就活中の大学生たちの物語ということで、昔の自分に重ね合わせて、胃がキュッとなるのを感じながらも、作品のあちこちに伏線がちりばめられていて、早く先が読みたいと思い、夢中で一気に読んでしまいました。
都内の一流大学に通い、優秀で、でもそれだけじゃなく、やさしくて親切で思いやりもある、最高の仲間であると信じて疑わなかった六人は、まるで地球からは見ることができない月の裏側のように、他人には言えない裏の部分を隠したクズだった。
人はだれしも複数の顔を持っている。
いいところもあれば悪いところもある。
僕は、たいして内容の濃い人生を過ごしてきたわけではありませんが、50年生きてきて、たくさんの人と出会い、関わってきたので
「完全にいい人も、完全に悪い人もこの世にいない」
「一面だけを見て人を判断することほど、愚かなことはきっとないのだ」
という文章は特に心に刺さりました。
生きていれば誰しも経験するようなことを題材にしたストーリーは入り込みやすく、とてもよかったです。
僕的には今のところランキング上位に置きたいと思える作品でした。
余談ですが、この作品を読んで、昔読んだ、第140回直木賞を受賞し、後に映画化もされた、天童荒太の「悼む人」という作品を思い出しました。
この作品は、ろくでもない死に方をしたクズのような人たちが、実は生前にいいこともしていたという内容の話で、今でも心に残っています。
もう14年くらい前の作品ですが、こちらも久しぶりに読み返してみたくなりました。