2022年本屋大賞ノミネート作品です。
個人的にノミネート作品全作品読破を目指してきましたがようやく7作目です。
長野県の山奥の大富豪が建設した硝子館で次々に起こる密室殺人事件の謎にミステリーマニアにして男装の美人名探偵、碧月夜(あおいつきよ)が挑む!というミステリー作品です。
登場人物にミステリーマニアが何人も登場してくるので、作中にとにかくミステリー小説に関する知識がふんだんにちりばめられていて、ミステリー小説好きにはたまらないのではないでしょうか。
ミステリー小説の歴史や作家の知識、ジャンル分け、トリックの手法など、読むのは好きだけど、あまり詳しくない僕にはとても勉強になりました。
ストーリーも、年齢、職業、性格も様々な個性あふれる登場人物たちと、密室のトリック、読者への挑戦状、二転三転する事件の真相と、とにかくミステリーの王道という感じの作品で、はやく続きが読みたくて、仕事中も隙間時間を見つけては読んだりしていました。
そのため、500ページという長編でしたが、平日の2日間で読破することができました。
この作品の前に読んだ「残月記」が重たい作品で、なかなか読み進めることができず、休日を含んでも1週間かかったことを思うとえらい違いです。
それにしても、僕はそれほどミステリー好きとは言わないまでも、東野圭吾や、伊坂幸太郎、湊かなえ、宮部みゆきなど現代のミステリー作品もいろいろ読んできたので、それなりにミステリー小説については知っているつもりだったのですが、ミステリー好きの王道からはどうやら外れていたようです。
この小説の中で挙げられている海外の古典作品や名作、日本のミステリー作家の名作はほとんど読んでおらず、登場人物たちのミステリー談義にも全然ついて行けず、いまいちピンと来ないところもありました。
特に、綾辻行人の名作といわれ、その後のミステリー界に大きな影響を与えたという「十角館の殺人」がこの作品の中にたびたび引用されているのですが、読んだことがなく悔しく感じたので、ぜひ読んでみようと思いました。
この「十角館の殺人」が発売された1987年といえば僕は高校生で、この頃は赤川次郎の「三毛猫ホームズシリーズ」や「三姉妹探偵団シリーズ」を夢中で読んでいたのですが、この「硝子の塔の殺人」の中のミステリーオタクたちの口からは赤川次郎のあの字も出てきませんでした。
当時大ヒットし、発売するたびにベストセラーとなった流行作家のミステリー作品もミステリーマニアたちからすると本格派とは言えないのかもしれません。
昨年の本屋大賞ノミネート作品の中には本格ミステリーと呼べる作品は見当たりませんでしたが、今年はこの作品以外にも「六人の噓つきな大学生」と「黒牢城」という2作品がノミネートされていて、どれも面白かったので、どの作品も上位が期待できます。
特に「黒牢城」は直木賞をはじめ、いくつもの賞を受賞しているので、本屋大賞も期待できるのではないでしょうか。
僕の個人的ランキングでもこの「硝子の塔の殺人」は上位にランクインする作品となりましたが、本家の本屋大賞では果たして何位に入るのか楽しみです。