あらすじ
都内の公園で臓器を抜き取られた少年の遺体が発見されるがなかなか身元が判明しない。
一方臓器を抜き取られた少年の遺体がその後も相次いで発見される。
捜査してみると彼らはみな貧困家庭で育った少年たちであることが判明する。
彼らの身にいったい何が起きたのか?
感想
格差、貧困、日本の臓器移植法の問題点、子供の臓器売買など、大きくなる一方の社会問題や闇をテーマにした社会派ミステリー小説です。
日本では脳死判定のハードルが高いことや子供の臓器移植が進まないことによる臓器売買の闇ルートの存在、貧困にあえぐ人たちが少しでもお金を得るために富裕層たちに自分の臓器を売るという現実など、読んでいて暗澹たる気持ちにさせられました。
子供の臓器売買の問題は、昔読んだ梁石日(ヤン・ソクイル)の「闇の子供たち」という小説で知っていましたが、あの小説はタイが舞台で、こんな話は貧しい発展途上国での話で、日本のような先進国とは無縁のことだと思っていました。
それが今では日本でも貧困家庭の子供たちの間で臓器を売るということが起きているらしいという事実に愕然としました。
バブル絶頂期には一億総中流と言われて貧困など存在しないといわれていた日本の経済もついにそこまで落ちてしまってきているのかと。
中山七里さんの作品では僕も関心の高い貧困、格差といった問題をテーマにした社会派ミステリーが多いようなのですべての作品読破を目指してみたいと思いました。