とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

「残穢」小野不由美(新潮文庫)

恐ろしい怨霊やモンスターが登場するわけでもなく、凄惨な殺戮シーンがあるわけでもありませんが、静かにヒタヒタと近付いてくる恐怖が、リアリティーがあって恐ろしいです。


主人公の作家が読者の住むマンションで聞こえてくる、布が畳を擦るような音の正体を探るために土地の記録を過去に遡るドキュメンタリーのような構成がユニークに感じて面白かったです。


バブル期、高度成長期、戦後期と過去に遡るうちに主人公達が探り当てる複数の事件は人も時代も違い、一見それぞれ無関係に思えるけど、明治大正期に遠い北九州の地で起きた炭鉱事故が全ての始まりであるという結論にたどり着きます。


その土地で過去に起こった事件の死の穢れ、すなわち残穢に触れた人が他の土地に移動して死穢を拡散させていく恐怖。
しかもそれは直接その場所に行かなくても、記録に触れただけでも感染する…。


最後にはこの本を読むことによって残穢に感染してしまったのではないか。そう思わせる恐怖がこの小説にはあります。
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