あらすじ
「大仏は眼が入って初めて仏となるのです。男たちが戦で彫り上げた国の形に、玉眼を入れるのは、女人であろうと私は思うのですよ」
宮中での権力を掌握するために源頼朝と北条政子の長女の大姫を後鳥羽天皇に入内させよという主人・六条殿の命を受けた女房の周子(ちかこ)は京の都から鎌倉へ下る。
しかし大姫は過去に許嫁である木曽義高を父・頼朝の命令で殺されて以来気鬱の病にかかり、心を閉ざしていた。
一方、そんな大姫を無理やりにでも入内させるために手段を択ばない母の政子。
京の都で繰り広げられる権力闘争と、朝廷と鎌倉幕府の関係をめぐる駆け引きに巻き込まれていく大姫の運命は?そして周子は大姫を入内させることができるのか?
感想
7月20日に発表される第167回直木賞にノミネートされている作品です。
まず、鎌倉時代初期を舞台にした歴史小説なのに、表紙の絵が現代風のファッションをした女性が双頭のライオンの椅子に座っているという、およそ物語と関係のないもので、はじめは歴史小説だとわかりませんでした。
なんでこんな表紙なのかとっても不思議というのが第一印象です。
後鳥羽天皇の寵愛を受ける女性たちの、次の天皇になる皇子を生むための競争や、源平の争いに勝利して誕生した鎌倉幕府を陰で支配する北条政子が登場することから、この作品のテーマとしては、男たちが争って国の形を作っても最後の仕上げは女性がするというもののようです。
しかし、僕が強く受けた印象としては、この作品の裏のテーマとして、昨今巷でよく聞く「親ガチャ」「毒親」というものがあるような気がしてなりません。
この作品で描かれる北条政子がまさしくそれで、大姫が幸せになるためだと思い込めば、本人の意向など関係なくそれを強力に推し進め、反論を許しません。
また、それがうまくいかないと家臣や姫の世話をする者たちに責任を転嫁し、まったく反省しません。
そのため大姫はますます心を閉ざし体調を崩していくという悪循環に陥って、読んでいて北条政子にイライラしっぱなしでした。
北条政子自身はそんな大姫の心の内のことは顧みず、純粋に愛する娘のためだと信じて疑わないから余計に質が悪いです。
国の方向性を決めてしまうほどのスケールではありますが、こういうところは昔も現代も変わらないということでしょうか?ホームドラマとしても楽しめる作品だと思います。
現在放送中の「鎌倉殿の13人」は観ていないのですがちょっと興味が湧きました。
果たしてこの作品が直木賞に選ばれるのか注目したいです。