2021年本屋大賞ノミネート作品です。
昭和から平成に代わる頃に三重県四日市市の、とある高校に保護された1匹の捨て犬と世話をする係りになった歴代の生徒たちをめぐる連作短編集です。
1980年代後半から21世紀をむかえる直前の2000年までを5章に別けて阪神淡路大震災やF1日本グランプリなどの災害や出来事、ヒット曲を交えて節目節目で起こった出来事に触れながら物語が綴られています。
混沌として先が見えず、時代の大きな変革期である現代と、高校3年生という受験や部活、恋愛など大きな変化がある時期を重ね合わせています。
自分は何者なのか、どうすればいいのかわからずに悩むある登場人物の高校生は、嵐のなかを行くものに勇気を与え、守り導くという船乗りたちの伝説の炎「セント・エルモス・ファイアー」がほしいと願います。
また、美大を目指す高校生は「思うように画けるかどうか不安になっても、昨日よりきょう、今日より明日。佳いものになると信じて画いていくしかない」と言います。
家庭の事情や友達との関係、成績の良し悪しなどで悩むそんな生徒たちに寄り添う犬のコーシローがとても可愛らしく登場人物たちと共に読んでいて癒されます。
自分も将来に漠然とした不安がありますが、セント・エルモス・ファイアーを探し求め、これから佳くなっていくと信じて歩いて行きたいと思いました✨