とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

1時間でわかる西洋美術史 宮下規久朗 宝島社新書

カラー版 1時間でわかる西洋美術史 (宝島社新書)

内容

石器時代のラスコーの洞窟壁画からギリシャ美術といった古代の美術からポップアートやアクションペインティングといった現代アートまで、ヨーロッパで生まれた西洋美術の歴史をカラーで分かりやすく解説した本です。

  1. 古代美術
  2. 中世美術
  3. ルネサンス
  4. バロックロココ美術
  5. 19世紀美術
  6. 20世紀美術

感想

中世のキリスト教を中心としたローマ教皇などの宗教的権威が支配する時代から絶対君主といった強力な国王、ルネサンス時代のベネチアフィレンツェの大商人たち、市民革命後の一般市民と、時代が進むにつれて権力者が変遷していく中で絵画のテーマや需要が変わっていったというのは興味深くて面白かったです。

 

また、2度の世界大戦を経て荒廃したヨーロッパからアメリカのニューヨークに芸術の中心が移って現代にいたる時代の変遷はまさに世界史そのものです。

 

芸術家といえばわがままで我が道を行き、自分の好きなテーマや手法を貫ければ食べられなくてもいいといったイメージがあったのですが、やはり芸術家も食べていかなくてはならないし、命も惜しいので、時の権力者に近づいて彼らが欲する絵画を描いていたのだというのは実に興味深いです。

 

絵画や彫刻や建築物といったアート作品からその時代の権力者が誰なのかや政治、思想の潮流といった歴史も学べて面白かったし、物事が多角的に見れるようになった気がしました。

 

 

 

 

 

 

 

帝国の崩壊(下) 歴史上の超大国はなぜ滅びたのか 鈴木董【編】 山川出版社

 

帝国の崩壊 下: 歴史上の超大国はなぜ滅びたのか

 

あらすじ

古代エジプト王国から大英帝国まで歴史上の14の超大国を挙げて繫栄から衰退そして崩壊するまでの過程を振り返り、なぜ滅びてしまったのかを考察する。

 

下巻ではビザンツ帝国神聖ローマ帝国大英帝国といったヨーロッパの帝国からモンゴル帝国オスマントルコ、大清帝国といったアジアの帝国まで比較的新しい帝国を7つ挙げている。

感想

東シナ海南シナ海でみられるような中国の台頭、今年2月から始まったロシアのウクライナへの軍事侵攻など、急速に力をつけてきた大国の強引に現状を変更しようとする試み。

 

また、ロシアに対抗して急速に拡大し結束を強めるNATOや、世界の警察官であることを放棄し覇権国家を抑えられなくなってきた超大国アメリカの衰退など現代は激動の時代です。

 

このような激動の時代をどのようにして生き抜いていくのか。

 

歴史上の超大国の栄枯盛衰、興亡の流れを知っておくことは現代を生きる僕らにとって大切な教養だと思いました。

 

また、超大国の崩壊を

  1. 崩壊(コア地域を残してバラバラになる)
  2. 分裂(バラバラになり消滅)
  3. 版図維持(政体が崩壊後も版図を維持)

の3つにパターン化する考えや、ラテン文字ギリシャキリル文字梵字アラビア文字、漢字文字世界として可視化した世界の5つの文化世界が並立しているという話は世界の構造を理解するうえでとても興味深かったです。

 

これからもこの激動の世の中を生き抜いていくために世界史に関する本をたくさん読んで教養を身に着けて、世界の仕組みを理解していきたいと思いました。

 

 

 

 

 

 

女人入眼(にょにんじゅげん) 永井紗耶子 中央公論新社

 

女人入眼

 

あらすじ

「大仏は眼が入って初めて仏となるのです。男たちが戦で彫り上げた国の形に、玉眼を入れるのは、女人であろうと私は思うのですよ」

 

宮中での権力を掌握するために源頼朝北条政子の長女の大姫を後鳥羽天皇に入内させよという主人・六条殿の命を受けた女房の周子(ちかこ)は京の都から鎌倉へ下る。

 

しかし大姫は過去に許嫁である木曽義高を父・頼朝の命令で殺されて以来気鬱の病にかかり、心を閉ざしていた。

 

一方、そんな大姫を無理やりにでも入内させるために手段を択ばない母の政子。

 

京の都で繰り広げられる権力闘争と、朝廷と鎌倉幕府の関係をめぐる駆け引きに巻き込まれていく大姫の運命は?そして周子は大姫を入内させることができるのか?

感想

7月20日に発表される第167回直木賞にノミネートされている作品です。

 

まず、鎌倉時代初期を舞台にした歴史小説なのに、表紙の絵が現代風のファッションをした女性が双頭のライオンの椅子に座っているという、およそ物語と関係のないもので、はじめは歴史小説だとわかりませんでした。

 

なんでこんな表紙なのかとっても不思議というのが第一印象です。

 

後鳥羽天皇の寵愛を受ける女性たちの、次の天皇になる皇子を生むための競争や、源平の争いに勝利して誕生した鎌倉幕府を陰で支配する北条政子が登場することから、この作品のテーマとしては、男たちが争って国の形を作っても最後の仕上げは女性がするというもののようです。

 

しかし、僕が強く受けた印象としては、この作品の裏のテーマとして、昨今巷でよく聞く「親ガチャ」「毒親」というものがあるような気がしてなりません。

 

この作品で描かれる北条政子がまさしくそれで、大姫が幸せになるためだと思い込めば、本人の意向など関係なくそれを強力に推し進め、反論を許しません。

 

また、それがうまくいかないと家臣や姫の世話をする者たちに責任を転嫁し、まったく反省しません。

 

そのため大姫はますます心を閉ざし体調を崩していくという悪循環に陥って、読んでいて北条政子にイライラしっぱなしでした。

 

北条政子自身はそんな大姫の心の内のことは顧みず、純粋に愛する娘のためだと信じて疑わないから余計に質が悪いです。

 

国の方向性を決めてしまうほどのスケールではありますが、こういうところは昔も現代も変わらないということでしょうか?ホームドラマとしても楽しめる作品だと思います。

 

現在放送中の「鎌倉殿の13人」は観ていないのですがちょっと興味が湧きました。

 

果たしてこの作品が直木賞に選ばれるのか注目したいです。

 

 

 

 

 

 

爆弾 呉勝浩 講談社

爆弾

あらすじ

自動販売機の器物破損と酒屋の主人への暴行の容疑で逮捕され取り調べを受けていた中年男性が、自分は霊感があるのだと言って都内での無差別爆破テロを予言する。

 

爆破テロの動機や目的もわからず、爆弾の在り処は容疑者の男が出すクイズの中にちりばめられているという。

 

警察は爆破テロを防ぐことができるのか?この男が犯人なのか?爆破テロの動機や目的は?

感想

7月20日に発表される予定の第167回直木賞にノミネートされている作品です。

 

東京都民1400万人を人質に取り、都内で次々に爆弾テロを実行するというこの作品は、自分が読んだミステリー小説の中ではかなりスケールが大きなストーリーだと感じました。

 

また、過去の不祥事を引きずる所轄の刑事や、周りが馬鹿に見えて仕方がないがそれを隠している警視庁の天才刑事、一生交番勤務でも構わないのに否応なく事件に巻き込まれてしまう女性巡査など、登場人物たちの個々のストーリーも絡まり合っていて読み応え抜群でした。

 

特に、爆弾の在り処を突き止めるための容疑者と刑事たちの駆け引きを伴うやり取りは、ひりひりするほどの緊迫感が伝わってきて圧巻です。

 

命の軽重と優先順位、自分が当事者でなければ関係ない、スマホで動画を撮ってSNSに投稿すればいいね!がたくさんもらえるのではないか、など、人間の心の中の闇の部分を炙り出していく物語は、自分ならその時にどうするだろうかということを考えさせられました。

 

7月20日に発表される第167回直木賞にこの作品が選ばれるのか注目していきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

帝国の崩壊(上)歴史上の超大国はなぜ滅びたのか 鈴木董【編】 山川出版社

帝国の崩壊 上: 歴史上の超大国はなぜ滅びたのか

あらすじ

軍事大国の財政破綻、改革の挫折、政治的緊張感の喪失…第一線の研究者が解く歴史上の14帝国の「崩壊」の道程。

 

上巻では古代エジプトに始まり、ヒッタイトアッシリアローマ帝国など、古代に栄えた7つの帝国の概要と崩壊に至る過程をその専門家たちが丁寧にわかりやすく解説。

 

感想

僕は今年で51歳ですが、高校生の頃1980年代後半の東ヨーロッパ諸国の民主化ソビエト連邦の崩壊を目の当たりにし、その後は超大国アメリカの衰退や覇権国家中国やロシアの台頭、そして今回のロシアのウクライナ侵攻と世界が目まぐるしく変化しているのを目にしてきました。

 

これからの世界はどのように変化していくのか、その中で自分はどのようにふるまえば生き残れるのかそんなことを考えると世界史に関する知識をしっかり身に着けたいと思い、この本を手に取りました。

 

前半に紹介されている7つの帝国は4000年も前に栄えた国もあって、記録も完全ではなく未解明な部分も多いので、帝国が滅びた理由が明確ではないものもありますが、いずれの国も外敵の侵入や財政破綻、統治システムの欠陥など複数の要因が重なった結果が多いようです。

 

現代の巨大国家に必ず当てはまるものでもないでしょうが、一つの国家が衰退して別の国家が台頭してくる過程などは現代の流れに重なる部分も多いなと感じました。

 

世界史を学ぶことによってこれからの世界はどのように変化していくのか、その中で自分はどうふるまっていけばいいのかを考えることの参考にするためにも継続的に世界史について勉強していきたいと思います。

 

 

 

異邦人(いりびと) 原田マハ PHP文芸文庫

異邦人 (PHP文芸文庫)

あらすじ

出産を控えた有吉美術館の副館長・菜穂は東日本大震災による原発事故で放射能汚染の脅威にさらされた東京を離れ、京都に長逗留しながら地元の名だたる名士や文化人と交流し、京都の魅力にどんどんのめりこんでいく。

 

そんな中、京都の老舗画廊に飾られていた一枚の絵に心を奪われる。

 

抜群の審美眼を持つ菜穂の心をひきつけて離さなくなったその絵を描いたのはまだ無名の若き女性画家だった。

 

一方、東京の菜穂の実家である不動産会社とその傘下にある個人美術館の有吉美術館、そして夫の父親が経営する老舗画廊は東日本大震災による買い控えの影響で急速に経営状態が悪化していた。

 

華麗なる一家の栄光と挫折、新たな出発を描く物語。

 

感想

僕は「楽園のカンヴァス」という作品を読んで以来原田マハさんの作品が大好きで、彼女の作品はすべて読破しようと思い、今のところ20作品近く読んでいます。

 

今まで読んできた作品はアートをテーマにしたものを中心に苦労や挫折がありながらも前向きに生きていくストーリーや深い感動を呼んで泣けるものが多かったのですが、この作品は今まで読んできた原田マハさんの作品の中ではちょっと異質な作品という印象を持ちました。

 

主人公の菜穂は美術品の価値を見極める超一流の審美眼の持ち主ですが、大金持ちの家に生まれて何の苦労もしてこなかったせいかわがままで自分勝手で、思い通りにならないと機嫌が悪くなるというお嬢様です。

 

また、夫やその父親、菜穂の実家の両親も何代も続く名家の生まれなので洗練はされていますが所詮は自分や会社の経営を優先させるところがあり、妊娠して一人で京都に逗留している菜穂のことは二の次にしてしまいます。

 

なので、どうもどの登場人物にも肩入れしにくかったです。

 

ここのところ、中山七里さんの貧困に追い込まれて餓死したり、自分の臓器を売ってしまうといった貧困格差がテーマの作品を立て続けに読んでいたこともあり、この作品の登場人物たちが貧困とは無縁のタワーマンションに住んでいたり、高級ホテルに長く滞在するとかいった話にイライラしました。

 

さすが原田マハさんのアート小説だと思う京都の歴史や伝統文化、それらに育まれてきた文化人たちに関する描写は素晴らしいのですが、没落していく華麗なる一族と、それに否応なく巻き込まれていく菜穂の抵抗など、ずっと不穏な雰囲気が漂っていてもやもやしながら読みました。

 

最後もハッピーエンドという感じでもなく、まるで湊かなえイヤミスを読んでいるような感じでした。

 

本の裏表紙の紹介にも著者新境地の衝撃作と書いてあるのでまさにそういった作品だった思います。

 

まだまだ原田マハさんの作品はたくさんあるので、すべての作品読破を目指して読んでいきたいと思います。

 

 

 

2022年6月に読んだ本まとめ

6月といえば例年は梅雨で雨が降り続き、休日は家にこもって読書をしていることが多いのですが、今年は史上最短の2週間という短さで梅雨が明けて僕が住む愛知県地方は連日の猛暑でますます家にこもって読書が進みました。

 

今月は、小説、教養本、まんがすべて含めると14冊読むことができました。

 

遅読のうえに500ページ近い大作も多かったので仕事に時間を取られながらも14冊も読めたのはなかなか読めたほうだと自分的には思います。

 

ジャンル別では

  1. ミステリー小説3冊
  2. 歴史小説2冊
  3. SF小説2冊
  4. ホラー小説1冊
  5. ファンタジー小説1冊
  6. 教養3冊
  7. マンガ2冊

このうち特に印象に残った作品を読んだ順番に3作品挙げると、

  1. 覇王の家(下) 司馬遼太郎  新潮文庫
  2. 護られなかった者たちへ 中山七里 宝島社文庫
  3. カインの傲慢 中山七里 角川文庫

でした。

 

特に中山七里さんの作品は貧困や格差の問題を扱う社会派ミステリーということで、僕もこの問題には関心があるのでとても興味深く、ミステリー作品としてもどんでん返しがあってとても面白く読めました。

 

 

これからしばらくはミステリー作品は中山七里さんの作品を読んで、全作品読破を目指したいと思います。

 

 

また、歴史小説といえば司馬遼太郎ということで、今月読んだ歴史小説は2冊とも司馬遼太郎作品でした。

 

 

司馬遼太郎の小説もまだまだ読んでいない作品がたくさんあるので全作品読破を目指して読んでいきたいです。

 

7月も猛暑が続きそうなので、休日はもっぱら家にこもって読書にいそしみたいと思います。

 

7月は第167回直木賞の発表もあるので、ノミネートされた作品を中心に読んでいきたいと思っています。

 

どんな作品に出会えるのか、今から楽しみです!