とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

大日本帝国の銀河2 林譲治 ハヤカワ文庫

大日本帝国の銀河 2 (ハヤカワ文庫JA)

あらすじ

地球から見てオリオン座の方向からやってきた地球外の存在であると主張するオリオン集団は1940年の時点では世界中のどの国も開発できない兵器を擁してイギリス、ドイツ、日本の戦闘機や戦艦を破壊して実力を示す一方、日本に対し大使館の設置を要求する。

 

ちぐはぐな対応を示す彼らの目的は果たして何なのか?

感想

オリオン集団の正体や目的がこの巻でも明らかにならず、謎が謎を呼び日本で憲法改正や新政府樹立の動きが出てきたり、第二次世界大戦のさなかに世界中の天文学者ソ連に集結してオリオン集団に関する情報を交換する動きが出てきたりと事態はますます混とんとする様相を見せて今後どんな展開になるのか見当もつきません。

 

若いころ好きで読んでいた架空戦記小説みたいに日本軍が欧米の軍隊をバンバン打ち破る話かと思ったのですがそれともちょっと違っているようです。

 

架空戦記とサイエンスフィクションとスパイ小説が融合したような作品で、この後どのような展開が待っているのかなかなか予想しずらく、今後のストーリーが大変気になります。

 

この作品は全5巻ですでに完結しているようなので続きも絶対読みます。

 

 

カインの傲慢 刑事犬養隼人  中山七里 角川文庫

カインの傲慢 刑事犬養隼人 「刑事犬養隼人」シリーズ (角川文庫)

あらすじ

都内の公園で臓器を抜き取られた少年の遺体が発見されるがなかなか身元が判明しない。

 

一方臓器を抜き取られた少年の遺体がその後も相次いで発見される。

 

捜査してみると彼らはみな貧困家庭で育った少年たちであることが判明する。

 

彼らの身にいったい何が起きたのか?

 

感想

格差、貧困、日本の臓器移植法の問題点、子供の臓器売買など、大きくなる一方の社会問題や闇をテーマにした社会派ミステリー小説です。

 

日本では脳死判定のハードルが高いことや子供の臓器移植が進まないことによる臓器売買の闇ルートの存在、貧困にあえぐ人たちが少しでもお金を得るために富裕層たちに自分の臓器を売るという現実など、読んでいて暗澹たる気持ちにさせられました。

 

子供の臓器売買の問題は、昔読んだ梁石日(ヤン・ソクイル)の「闇の子供たち」という小説で知っていましたが、あの小説はタイが舞台で、こんな話は貧しい発展途上国での話で、日本のような先進国とは無縁のことだと思っていました。

 

 

それが今では日本でも貧困家庭の子供たちの間で臓器を売るということが起きているらしいという事実に愕然としました。

 

バブル絶頂期には一億総中流と言われて貧困など存在しないといわれていた日本の経済もついにそこまで落ちてしまってきているのかと。

 

中山七里さんの作品では僕も関心の高い貧困、格差といった問題をテーマにした社会派ミステリーが多いようなのですべての作品読破を目指してみたいと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人斬り以蔵 司馬遼太郎 新潮文庫

人斬り以蔵 (新潮文庫)

大村益次郎岡田以蔵後藤又兵衛塙団右衛門など幕末に活躍した志士や戦国武将だけど、歴史ファン以外にはあまり知られていないような人物やエピソードを8編描いた短中編集です。

 

表題の「人斬り以蔵」は幕末の世を震撼させた暗殺者岡田以蔵の生涯を描いた作品ですが、土佐藩での足軽郷士、上士での扱いの違い、生まれた家が違うだけでこうも違うかといったあまりにも苛烈な、もはや差別ともいえるような身分制度には、現代人の我々が知っている差別とは比べ物にならない過酷さがあり、憤りを感じました。

 

一方、「おお、大砲」という作品は、現在の奈良県にあった高取藩に代々伝わる大坂の陣で使われたいう大砲が幕末の戦乱で再び使われたというエピソードです。

 

徳川家康から特別に与えられて200年以上大切に保管されていた大砲をいざ再び戦争で使った時にどのようなことが起こったか。

 

300年近い平和な時代が続いて、もはや使い方もよくわからなくなっていた大砲とそれを守り続けてきた人々をユーモラスでちょっと滑稽に描いたお話で興味深くもあり、笑える話でもあり印象に残りました。

 

高校生や大学生のころに司馬遼太郎の作品にはまって小説やエッセイもいろいろ読んだのですがまだまだ未読の作品もたくさんあり、なんといっても代表作である「竜馬が行く」をまだ読んだことがないので、時間はかかりそうですが読んでいこうと思います。

 

司馬遼太郎作品すべて読破を目指します。

 

 

 

宇宙皇子 第3期妖夢編2 忍ぶ草を結んで 藤川桂介 カドカワノベルズ

宇宙皇子(うつのみこ)〈妖夢編 2〉忍ぶ草を結んで (カドカワノベルズ)

あらすじ

平城京に都が移り、天平文化が花開いた一方で聖武天皇孝謙天皇と代替わりするにつれて帝の現人神(あらひとがみ)としての力が衰えて国を治めることが容易ではなくなりつつあった。

 

そのため、聖武天皇平城京に廬舎那仏を建立し、全国にも国分寺を築いて仏教の力によって国を治めようと試みるが各地で妖魔が跋扈しはじめて民を苦しめていた。

 

妖魔に苦しめられる民たちを救うために宇宙皇子(うつのみこ)、各務を中心とする金剛山の修験者たちは各地を奔走する。

 

彼らは果たして妖魔を鎮めることができるのか?

感想

もう30年以上も前、高校生の頃にドはまりして夢中で読んでいた飛鳥、奈良時代を舞台にした歴史ファンタジー小説です。

 

はじめは表紙カバーのいのまたむつみのイラストに惹かれてジャケ買いしたのですが物語にもはまって飛鳥、奈良時代といった古代史にも興味がわいて奈良でお寺巡りなどもしました。

 

最近そのことを思い出してまた読んでみたいと思い立ちアマゾンで購入しました。

 

宇宙皇子という作品はかなりの長編の物語で、地上編、天上編、妖夢編、煉獄編、黎明編の5部構成となっていて、それぞれが10巻まであってウィキペディアによると黎明編だけは8巻で完結しているようですが全部で48巻まであるようです。

 

僕は当時妖夢編の途中でよむのをやめてしまったのでその後どのような展開でラストはどうなったのかを知りません。

 

地上編と天上編は今でも実家の本棚に並んでいるのですが妖夢編は途中までしか読んでおらず、捨ててしまったので、とりあえず妖夢編の10冊を購入しました。

 

今は昔の作品でもわざわざ東京の神田神保町まで行かなくてもネットで探せば割と簡単に手に入るので便利な時代になりました。

 

こうやって若い頃に読んで印象に残っている作品を何十年後かに改めて読んでみてどう感じるのか、あのころとは違うのか、それとも変わらないのか確かめてみるのもいいものですね。

 

当時途中であきらめて読んでいない妖夢編、煉獄編、黎明編を最後まで読み切りたいと思います。

 

 

太陽は動かない 吉田修一 幻冬舎文庫

太陽は動かない (幻冬舎文庫)

国家間の新しいテクノロジーや新エネルギーの技術といった次の時代の主導権をめぐる争いの裏で暗躍する秘密組織のエージェントたちを描くスパイ小説のような物語です。

 

心臓に爆弾を埋め込まれ、24時間ごとに組織に連絡を入れないと、裏切ったとみなされて爆死するという、死の危険と隣り合わせのエージェントたちが世界を舞台に活動し、ピンチとアクションの連続で今日の敵が明日は味方だったり、またその逆もあったりして息つく暇もないエンターテインメント小説です。

 

吉田修一さんの作品は過去に「怒り」と「ひなた」と二作品を読んだことがあるのですが、三つともテイストが全く異なる作品で、作者の懐の深さを感じました。

 

 

 

なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか? 西剛志 アスコム

なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?

あらすじ

うまくいく人といかない人の最大の違いは「コミュニケーション」にある。

 

「自分の脳と相手の脳が見せる世界が違うということをしっかりと認識している人」がコミュニケーションスキルが高いということ。

 

あなたが見ている世界は、あなただけに見えている世界です。

あなたと一緒にいる人が見ている世界は、その人だけに見えている世界です。

私たちが互いにわかりあうためにできることは、まず、その違いを認めることです。

 

私たちの脳は3つのタイプに分かれます。

  1. 視覚を優先するタイプ
  2. 聴覚を優先するタイプ
  3. 触覚、味覚、嗅覚などを含めた体の感覚を優先する体感覚タイプ

私たちの脳は利き手や男女、欧米人と日本人といった体の特性でも違う傾向がある。

 

また、私たちの脳は柔らかいものに座ると心が穏やかになる、温かいものを持っているとやさしくなる、緑のあるところで暮らすと創造性が高まる、など、環境によっても違う傾向にある。

 

婚活や投資で失敗する人は、こだわりが強く視野が狭い、たった一回の出来事で、100%正しいと思う人がいる、など、私たちの脳は、思い込みによっても違う傾向があります。

 

私たちは分かり合えないのが自然です。だからこそ、それを受け入れることが大切なのです。

 

感想

若いころに7人連続で失恋したり、何人もの同僚や友人からの借金の申し込みを断り切れずに貸したらそのまま返してもらえずに気まずくなって疎遠になったりと、人間関係がうまくいかずにだんだん煩わしくなって、休日は一人で過ごすことが多くなってきました。

 

そんなこんなで若いころに比べると友人の数がかなり減ってしまいましたが、50歳独身、一人暮らしの自分としてはそろそろ将来の孤独死が頭をよぎるようになって、もう少し社会とのつながりを持ったり、友人を増やさねばと考えるようになりました。

 

そんなタイミングで偶然この本を読んで、今まで感じていた人間関係を築いていくことに関するわずらわしさやストレスが少し軽減できそうな気がしました。

 

まだまだ、休日は一人で本を読んでいるほうが気楽でよい、誰かと会うのは気が重いと考えてしまいますが、少しずつでも変わっていけたらと思います。

 

 

ゴーストハント 5 鮮血の迷宮 小野不由美 角川文庫

ゴーストハント5 鮮血の迷宮 (角川文庫)

あらすじ

長野県諏訪地方の山中に明治時代からある古い洋館で次々に起こる謎の失踪事件の解決を依頼され、国内外の名だたる霊能者や研究者が招集された。

 

洋館の中を調査しているさなかにも館にいる人間が一人、また一人と姿を消していく。

 

謎の増改築を繰り返して複雑な構造になった洋館の過去の秘密とは?また、そこに棲むたくさんの霊たちの正体とは?

感想

ファンの間ではシリーズ最恐との呼び声が高い本作ですが、文章におどろおどろしい雰囲気もなく、登場人物たちがライトノベルのようなユーモラスなやり取りをするので、たしかに凄惨なシーンはありましたが自分としてはそれほど恐ろしいと感じることはありませんでした。

 

小野不由美さんのホラー作品としては「残穢」や「営繕かるかや怪異譚」といった作品を読んだことがありますが、これらの作品のほうが本格的に恐ろしく、ホラー好きにはこちらのほうがお薦めです。

 

ただ、シリーズを通して主要な登場人物たちには謎も多く、伏線もいろいろ張られているので、ホラー初心者やミステリー好きの人にも楽しめる作品だと思います。

 

全7作品の5巻となり、主人公の女子高生麻衣の生い立ちや主要な登場人物の一人である謎の中国人リンの能力の一端がみられるなど少しずつ伏線の回収が始まってきました。

 

この物語には主に7人の主要人物がいて、それぞれが大変個性的な霊能者たちなのですが、シリーズ開始当初はお互いにいがみ合って仲が悪かったメンバーたちが、物語が進むにつれてお互いを理解し、危機が迫ればそれぞれの得意技を生かして協力し合うなど次第にいい関係になってきているのが僕はとても好きです。

 

これから残り6巻と7巻で伏線がどのように回収され、どんな結末を迎えるのかますます楽しみです。