とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

「首里の馬」高山羽根子(新潮社)

僕には読書に関する一つの悩みがあります。

それは芥川賞受賞作品を読んでもちっとも面白いと思えないということ。

毎回買って読んでいるというわけではないのですが今まで読んできた作品もいまいち理解できないものが多かったです。

自分の理解力が足りないのか、僕の感覚と純文学の新人作家に贈られるという芥川賞受賞作品との相性が悪いのか。

この「首里の馬」も正直言って頭のなかにクエスチョンマークがつくような場面がたくさんあって、ラストも結局どういう事なんだろうという終わりかたでモヤモヤしました。

でも、文章は透明感があって読みやすく、ページ数も160ページもないので途中で止めたくなるような事もなくサクサク読めました。

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自分としては、沖縄の悲劇の歴史を通じて、知らないことは危険なことであって、知ろうとすること、お互いを理解するための努力が必要だということが大事だと言いたいんだろうと自分なりに解釈しました。

そういう主張はおおいに共感出来ました。

世界の辺境にいる孤独な人たちに向けてリモートでクイズを出すというなぞの職業の正体とか、幻の宮古馬がどこから来て、なぜ主人公の未名子の家の庭に来たのかなどの答えも語られないまま物語は終わってしまい本当に不完全燃焼です。

しかし、こういう謎を自分なりにあれこれ想像してみるというのも一つの楽しみかたかもしれないと最近思うようになりました🎵

いろんなジャンルの文学作品を読んでみたいと思っているので、今後も純文学と言われる作品もどんどん読んでいきたいと思います。

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「第三の時効」横山秀夫(集英社文庫)

第三の時効」はF県警捜査一課強行犯係の超個性的な三人の班長と部下、その三人をうまくコントロールできずに悩む上司たちを主人公にした連作短篇集です。

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2006年に発行され、2020年に31刷まで発行された警察小説の傑作です。
定価は720円+税です。

作者の横山秀夫さんは日本を代表するミステリー作家の一人と言っても過言ではないでしょう。

中年の渋い男を主人公にしたハードボイルドな作品は魅力的でどの作品も夢中になって読みました。

半落ち」「64ロクヨン」「クライマーズハイ」などの作品が映像化され、今年2020年の本屋大賞では「ノースライト」が第二位になりました。

この「第三の時効」も2002年に第16回山本周五郎賞候補になりました。

この作品の一番の魅力は個性的な三人の班長はじめ、登場人物たちのキャラクターです。

過去の事件のトラウマで笑顔をなくした一班の朽木、元公安刑事で犯人検挙のためなら手段を選ばない「冷血」の異名をとる二班の楠見、天才的な直感力で数々の事件を解決した三班の村瀬。

それぞれの班はお互いをライバル視しているので仲が悪く、隣にいても口もきかないほどですが激しい競争心が事件の早期解決に繋がって検挙率はほぼ100%をほこっています。

しかし、その個性的な班長たちをうまくまとめられず苦悩する上司たちや、同じ班の中でさえ競争をして仲が悪い部下たちなど、とにかく登場人物たちが魅力的でそれだけでも十分読み応えがあります。

それに加えて各章の事件のなぞが秀逸で面白く、その真相を早く知りたくてどんどん読んでしまいました。

このF県警の刑事たちを主人公にした作品は続編も出ているようなのでそちらも是非読んでみたいと思います🎵

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「最悪の将軍」朝井まかて(集英社文庫)

「最悪の将軍」は徳川幕府5代将軍徳川綱吉を主人公にした歴史小説です。

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徳川綱吉と言えば悪法と言われる生類憐れみの令を制定したり、老中を遠ざけて柳沢吉保といった側用人を重く用いたなど、現代では評価の低い将軍として有名ですが実際のところはどうだったのか、果たして本当に最悪の将軍だったのか?

作者の朝井まかてさんは江戸時代を舞台とした歴史小説や時代小説を多く手がけていて、幕末から明治にかけて活躍した実在の歌人を主人公にした「恋歌」で2014年に直木賞を受賞しています。

また、2017年には葛飾北斎の娘を主人公にした「眩」という作品がNHKでドラマ化されました。


関ヶ原の戦いから80年、戦国最後の戦である大坂夏の陣からも65年たった17世紀末。

未だに殉死や刃傷沙汰などの戦国の気風が残っている時代に5代将軍に就任した徳川綱吉は武士達の意識を平和な時代に則したものに変えていこうと文治政治を行い改革を次々に断行します。

その前半は天和の治と呼ばれ8代将軍徳川吉宗が参考にしたほどだということです。

しかし命への慈しみを人々の心に養うことで、秩序に満ちた世を開くという目的で制定された生類憐れみの令は、人よりも犬猫を大事にせねばならぬのかと民衆から心得違いをされます。

また、赤穂浪士の討ち入り、大地震や富士山の噴火などの災害
が続き、将軍の不徳だ、最悪の将軍だと言われ激しい挫折感を味わいます。

徳川綱吉は本当に最悪の将軍だったのか?政治のトップに立つものの孤独感がよくわかるいい作品だと思いました✨

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「営繕かるかや怪異譚その弐」小野不由美(角川文庫)

小野不由美さんの小説「営繕かるかや怪異譚」は、ホラー小説なんだけど、ただ怖さを強調した物語ではなくて、心が暖まって泣ける、そんな作品です。

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作者の小野不由美さんは大ヒット中華ファンタジー十二国紀」や「残穢」といったホラー小説を多く手がけていて、僕も大好きな作家さんの一人です。

「営繕かるかや怪異譚その弐」は連作短篇の小説で、2019年7月31日初版発行、定価1600円(税別)です。

この小説は古い城下町に残る古民家で起こる怪異を改築や修繕、今風にいえばリフォームすることによって解決しようというユニークな作品です。

そこには幽霊を倒したり追い払おうとか封じ込めようといった発想は全くありません。そこがとても魅力的な作品だと感じました✨

害をもたらすような存在ではないのなら一定の距離を保った上で共存しようといった、まるで人と自然の共生と同じ発想で、なる程な~と思いました✨

第二章で主人公の佐代という女性が子供の頃神社で出会った鬼はなんだったのか、第四章の主人公のリフォーム好きの女性、育の夢に出てくる怒っている外国人の女性は誰なのか、五章、六章に出てくる幽霊の正体は?

その真実を知ったとき暖かい気持ちになると同時に涙が溢れました。

幽霊が出てくる理由は怨みのある相手を呪い殺すだけではないんだ、大切な人に何か大事なことを知らせるために出てくることもある、だから不必要に怖れることは無いんだ、大切なのは相手を知ることなんだと。

そんなことをおしえてくれる作品だと思いました。

現在も雑誌で連載中とのことなので、続編も楽しみにしたいと思います🎵

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国宝犬山城

2020年9月26日天気は曇り。
湿度も低くちょうど良い陽気なので、犬山城まで原付でツーリングしてきました🎵

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僕が住む愛知県一宮市からは原付で40分~50分とツーリングにはちょうど良い距離です。

木曽川沿いの堤防道路を犬山城に向かって走るともう彼岸花も咲いていて秋の訪れを感じました。

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行ってみたはいいがお城の近くには原付を停めておく適当な場所が見つけられず、結局犬山城の中には入らずに周辺をぐるっと走ることにしました。

夕方の曇り空の雲の間から射し込む西日に照らされた犬山城はとても趣がありました。

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「少年と犬」馳星周(文藝春秋)

2020年7月に発表された第163回直木賞受賞作です。

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東日本大震災で被災した犬と傷つき悩む人びととの感動ストーリーです。

岩手県で被災し飼い主とはぐれた犬が何故か西へ西へと長い旅に出て、その途中で出会った心の傷や悩みを持つ人たちに安らぎをあたえてくれます。

貧しさから犯罪に手を染めてしまった人、外国人の窃盗団のリーダー、心が離れてしまった夫婦など、それぞれの人たちに安らぎと新たな決意をあたえているストーリーに感動しました。

また、犬はなぜ西に向かうのか、どこに行こうとしているのかというなぞの真相と結末も感動的で涙が出ました。

馳星周さんの作品はこれがはじめてでしたが、他の作品も是非読んでみたいと思います。

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「ジヴェルニーの食卓」原田マハ(集英社文庫)読了

フランス印象派絵画の巨匠アンリ・マティスエドガー・ドガポール・セザンヌクロード・モネの四人をテーマにした短編集です。

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とはいっても、それぞれの物語を四人の巨匠の視点からではなく、彼らと深く関わった人から見た巨匠達の姿が描かれています。

マティスは、彼の作品に心から惚れ込んでいた若い家政婦の女性。ドガは、親友でアメリカ人女性画家のメアリー・カサット。セザンヌは、貧乏画家達を支えたタンギー爺さんとその娘。そしてモネは再婚相手の連れ子の娘から見た姿です。

表題のジヴェルニーの食卓のジヴェルニーとは今でもフランスにあるモネの庭園のある所の地名だそうです。

彼らの作品のエピソードや巨匠達や絵画の歴史などにも触れられていて、知的好奇心が刺激されました。

読み終わった後に美術館に行きたくなること必至です🎵