とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

光文社文庫の「日向坂文庫2021冬の書店デート」フェア

よく行く書店で光文社文庫のキャンペーンを大々的にやっていました。

その名も「日向坂文庫2021冬の書店デート」フェアです。

日向坂(ひなたざか)とは現在人気急上昇中のアイドルグループ日向坂46の事です。

もともと欅坂46(漢字けやき)の姉妹グループである、けやき坂46(ひらがなけやき)として結成されたのですが2019年の春に日向坂46に改名して別のグループとなりました。

2019、2020年と2年連続で紅白歌合戦出場を果たし、2020年の12月には東京ドーム公演が予定されていたのですがコロナウイルスの影響を受けて2021年に延期されています。

日向坂46はバラエティーに対する対応能力もあって最近テレビにもメンバーがよく出演しているのを見るので僕も大好きです。

彼女たちには見る人を明るくさせるパワーがあってファン(おひさま)の間では「ハッピーオーラ」と呼ばれていて日向坂46の代名詞となっています。

現在メンバーは全部で22人いるので、日向坂文庫は22冊あるようですがメンバーの年齢によって本も大人向けの作品からまだ高校生のメンバーのものはライトノベル的な若年層向けの作品から選ばれている印象でした。

さすがに金銭的にいっぺんに全部買うのは無理だし、僕はグループ全体を応援しているいわゆる箱推しなので特に推しているメンバーがいるわけでもありません。

推しメンがいる人なら迷わずその人が表紙を飾っている作品を選ぶんでしょうけど、僕はとりあえず好きな作家で選びました✨

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「刑事の子」宮部みゆき

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女性ファッション誌でモデルを務めるほどきれいなのにそれだけじゃなく面白くてバラエティー番組でも大活躍の1期生メンバー、かとしこと加藤史帆さんが表紙です。

宮部みゆきさんの作品は「小倉写真館」や「ぺテロの葬列」など幾つか読んだことはあるのですが、ミステリー、ホラー、時代小説といった多岐にわたる分野の作品を書かれているのでこれからどんどん読んでいきたいと思っています。

「おさがしの本は」門井慶喜

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大学で日本文学を専攻し古典の研究もしているという2期生メンバー宮田愛萌さんが表紙です。彼女のブログでは本の紹介もよくしているので楽しく読ませてもらっています。

現在は体調不良で休業中とのことで心配ですが体調を万全にして早く復帰してもらいたいです。

門井慶喜さんの作品は先月「銀閣の人」という足利義政を主人公にした歴史小説を読んだばかりだったので買いました。

この作品は歴史小説ではありませんが図書館司書が主人公のようです。つい最近読んだ本屋大賞ノミネート作品の「お探し物は図書室まで」(青山美智子)という作品も司書が出てくる話だったので読み比べが楽しみです。

「ひなた」吉田修一

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日向坂46のキャプテン佐々木久美さんが表紙です。

この人がいたからこそ今の日向坂46があるんだと思います。普段はとても明るくてメンバーを元気に引っ張っていきますが、怒るときには怒るというメリハリのある人のようで、後輩メンバーからも尊敬されています。

吉田修一さんの作品は「怒り」しか読んだことはありませんがこの作品は強烈な印象があったので読んだのは何年も前ですが今でもよく記憶に残っています。

「ひなた」はどんな作品なのか、まだわかりませんがまさにグループを引っ張ってきた佐々木久美さんが表紙にふさわしいタイトルですね。

芥川賞直木賞本屋大賞ノミネート作品発表と立て続けにあって大量に本を購入したところだったので積ん読本がたくさんあるのですが、早く読んでいきたいです✨

「犬がいた季節」伊吹有喜(双葉社) 1600円+税

2021年本屋大賞ノミネート作品です。

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昭和から平成に代わる頃に三重県四日市市の、とある高校に保護された1匹の捨て犬と世話をする係りになった歴代の生徒たちをめぐる連作短編集です。

1980年代後半から21世紀をむかえる直前の2000年までを5章に別けて阪神淡路大震災やF1日本グランプリなどの災害や出来事、ヒット曲を交えて節目節目で起こった出来事に触れながら物語が綴られています。

混沌として先が見えず、時代の大きな変革期である現代と、高校3年生という受験や部活、恋愛など大きな変化がある時期を重ね合わせています。

自分は何者なのか、どうすればいいのかわからずに悩むある登場人物の高校生は、嵐のなかを行くものに勇気を与え、守り導くという船乗りたちの伝説の炎「セント・エルモス・ファイアー」がほしいと願います。

また、美大を目指す高校生は「思うように画けるかどうか不安になっても、昨日よりきょう、今日より明日。佳いものになると信じて画いていくしかない」と言います。

家庭の事情や友達との関係、成績の良し悪しなどで悩むそんな生徒たちに寄り添う犬のコーシローがとても可愛らしく登場人物たちと共に読んでいて癒されます。

自分も将来に漠然とした不安がありますが、セント・エルモス・ファイアーを探し求め、これから佳くなっていくと信じて歩いて行きたいと思いました✨

「お探し物は図書室まで」青山美智子(ポプラ社) 1600円+税

2021年本屋大賞ノミネート作品です。

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ブックカバーのデザインを一目見て、ほんわかする内容の物語を予想したのですが、実際にその予感は的中し、とてもハートフルで心がポカポカし、読後感も清々しくてとても気持ちがいい作品でした✨

この作品は全部で5章あって、それぞれ主人公が違う連作短編集です。

年齢も職業も違うそれぞれの章の主人公たちはみんな何かしら問題を抱え、何かを見失っています。

それは仕事をする目的だったり、モヤモヤの解決法だったり、あるいはもて余した夢の置場所や自分の居場所だったり。

そんな登場人物たちがたまたま訪れたコミュニティハウスの中にある図書室にいた巨大な女性司書の小町さゆりに選んでもらった本と付録で貰った羊毛フェルト

本とフェルト自体に何か力があるわけではないけれど、登場人物たちはその中から自分で必要なものを受け取ってそれぞれ抱えた問題を解決していきます。

問題を解決していく過程で大切な人や大事な物に気付いて成長していく姿にうるっときたりほっこりしたりとても温かい気持ちになりました✨

また、章ごとに主人公は違いますが連作短編なので間接的に繋がっていて、前の章に出てきた人物たちがその後どうなっているかがわかるのも良かったです🎵

この作品を読んで、心が動き人生を好転させて心豊かな日々をおくれるようになるのが読書の醍醐味だと思いました。

これから自分ももっともっとたくさんの本を読んで作り手の狙いとは関係無く、自分自身に紐づけして自分だけの何かを見つけて人生を豊かに生きて行きたいと思います。

「自転しながら公転する」山本文緒(新潮社)1800円+税

2021年本屋大賞ノミネート作品です。

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500ページ近い大作で、平日の仕事の合間などに読んでたら読破するのに4日かかりました😅

普段あまり恋愛小説は読まないのですが、本屋大賞ノミネート作品ということもあり、この不思議なタイトルにも惹かれて思わず手に取りました。

恋愛、仕事、親の介護といった問題をいっぺんに抱え込んでしまって悩みもがき苦しむ、ごく普通のアラサー女性が主人公の物語です。

本のタイトルは、そのいろいろな問題を抱えながらあっという間に時間が過ぎていく様を秒速465メートルというものすごい速さで自転しながらその勢いのまま秒速30キロで公転している地球に例えています。

しかも地球はただ円を描いて回っているんじゃなくて、太陽自身も銀河系の中を渦巻き状に回っているのでぴったり同じ軌道には一瞬も戻れない。

人生はすごいスピードで回りながら宇宙の果てに向かっている地球のようなものだと。

アラサー女性の与野都は中卒で年下の寿司職人の彼との将来に不安を持っています。

また、職場の人間関係、上司からのセクハラ、女は早く結婚して子供をつくることが一番の幸せという古い考えを持つ父親との摩擦に悩みます。

おまけに母親が重い更年期障害になってしまい介護が必要に。

さらに、結婚して幸せな家庭を築いている親友と、自立していて高学歴の年上の恋人といい関係を築いている後輩をただ羨ましく思い妬んでもいます。

そんな中、年下でイケメン、おまけにお金持ちのベトナム人ニャン君から猛烈アプローチを受けることに。

都は果たしてどんな決断をするのか。

悩んでいる割にはあまり深く物事を考えず、将来のビジョンも無く、調べようともせずにただ周囲を羨んだり八つ当たりする主人公にイライラしましたが、自分も含めて案外こういう人は多いんじゃないかとも思いました。

光陰矢の如し。過ぎた時間は2度と帰ってこないのだから、将来のビジョンをしっかりと持って、そこに向かって努力していくことが大事だとあらためて感じました。

2021年1月に読んだ小説

2021年1月は年明け早々新型コロナウイルス第3波の影響で僕が住む愛知県をはじめ隣の岐阜県、東京都や大阪府など11の都府県で再び緊急事態宣言が出されたり、日本海側で大雪になるほど寒い日が続いたこともあり、休日はどこにも出かけずに家でじっくり本を読むことが出来ました。

1月に読破した本は新書やビジネス本、マンガも含めて全部で15冊。そのうち小説は約半分の7冊でした。

ジャンル別ではファンタジーが2冊、時代・歴史小説が2冊、SFが1冊、ジャンル分けが難しい作品が2冊です。

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1,「星系出雲の兵站3」林譲治(ハヤカワ文庫)

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謎の異星人ガイナスとの戦闘において壱岐星系と出雲星系の主導権争いが激化。どの様な結末が待っているのか、ガイナスはどの様な異星人なのかその正体はいつ明らかになるのか続きが楽しみです。

2,「銀杏てならい」西條奈加(祥伝社文庫)

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武士に育てられた捨て子の娘が成長し手習い所の師匠に。新米先生が様々な身分や環境で育った子供たちを相手に奮闘し人間として成長していく姿が微笑ましい。

読了直後に西條奈加さんの「心淋し川」(集英社)が直木賞を受賞したので早速買ってきました🎵2月中には読んでみたいです✨

3,「神様の御用人9」浅葉なつ(メディアワークス文庫)

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神様の頼みごとを受ける御用人に指名されたフリーターの男が神様の無茶振りに悩み苦しみながらも何とか解決し成長していくコメディーファンタジーだったのですが、今回は結構シリアスな雰囲気。

しかも10巻に持ち越しという異例な展開です。次でシリーズは一区切りということで、完結してしまうのか、第2幕に繋がるのか、ファンとしては気になるところです。

4,「億男川村元気(文春文庫)

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失踪した弟の残した莫大な借金を請け負ってしまったために家庭が崩壊してしまった男がお金と幸せの答えを探して出会いの旅をする物語です。お金に関する偉人の名言や知識も学べてビジネス書としても読めます。

5,「銀閣の人」門井慶喜(角川書店)

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室町幕府8代将軍足利義政の生涯を描いた物語です。政治家としては無能のレッテルを張られた義政が「治国で負けて、文事で勝つ」の想いを胸に日本家屋の原点である銀閣寺東求堂の部屋"同仁斎"を造り上げるまでを描きます。

6,「後宮の烏5」白川紺子(集英社オレンジ文庫)

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80万部を突破した大人気中華ファンタジーです。
皇帝の夜伽をしない特別な妃「烏妃」をめぐる前王朝から続く数百年の因縁を断ち切るために動く人々やそれを利用して世界をひっくり返そうと暗躍する謎の人々など、展開が複雑でなかなか理解するのが大変です。

後宮の奥深くたった一人で生きてきた烏妃の寿雪に大切な仲間が少しずつ増えることで戸惑いながらも温かい気持ちが芽生える一方で、仲間をつくってはいけないという代々の烏妃の掟を破ってしまったという罪悪感に揺れる心がとても切ないです。

7,「52ヘルツのクジラたち」町田そのこ(中央公論新社)

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2021年本屋大賞ノミネート作品です。

児童虐待ドメスティックバイオレンストランスジェンダーといった重くて難しいテーマを取りあげた作品です。

重たいテーマなだけに、途中目を逸らしたくなるような描写も出てきて胸が締め付けられましたが、心温まるシーンもたくさん出てきて泣けました。心に残るいい作品だと思います。


引き続き緊急事態宣言が継続中で3月7日まで延長されることも決まったので、2月も休日はなるべく出かけずにじっくり読書三昧でいこうと思います。

特に2月、3月は本屋大賞ノミネート作品を中心に読んでいきたいと思います。

「52ヘルツのクジラたち」町田そのこ(中央公論新社)1600円+税

2021年本屋大賞ノミネート作品です。

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児童虐待やDV、性的マイノリティーといった重たくてなかなか取りあげづらいテーマをあつかった作品です。

52ヘルツのクジラとは世界で一番孤独だと言われているクジラ。その声は広大な海で確かに響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない。

誰にも届かない歌声をあげ続けているクジラは存在こそ発見されているけれど、実際の姿は今も確認されていないという。

他の仲間と周波数が違うため、仲間と出会うことも出来ない。たとえ群れがすぐ近くにいたとしてもすぐ触れあえる位置にいても、気がつかずにすれ違ってしまう。

本当はたくさんの仲間がいるのに何も届かない。何も届けられない。それはどれだけ孤独だろう…。

主人公の三島貴瑚(26歳)は子供の頃から実の母親と義父から言葉や暴力、食事を与えられないなどの虐待を受け、成人してからも就職もさせてもらえず病に倒れた義父の介護をたった一人でやらされるという搾取を受けていました。

そんな貴瑚を救いだしてくれた人たちとも悲劇的な結末を迎え、何もかもが嫌になって逃げるように引っ越してきた大分県のある田舎町で彼女は一人の少年と出会います。

その少年はしゃべることが出来ず、母親からムシと呼ばれ酷い虐待を受け同居する祖父からは無視されていました。

52ヘルツのクジラたちである二人は声を聴いてくれる仲間の群れを見つけられるのか、愛を注ぎ注がれるようなたった一人の魂の番(つがい)に出会うことが出来るのか_。


子供の頃の貴瑚が母親や義父から虐待を受ける描写やたった一人で義父の介護を強いられるシーンは読んでいて胸くそが悪くなりました。

また、両親からの搾取という絶望的な状況から救いだされ、やっと平穏な生活をおくり始めたのに再び起こった悲劇に胸が締め付けられました。

その一方で、絶望的な状況から貴瑚を救いだしたアンさんや、疲れはて大分に行ってしまった貴瑚のために必死に動く親友の美晴には感動しました。

また、次第に元気を取り戻し、今度は少年を救うために奮闘する貴瑚の姿など、心が温まり、感動的で泣けるシーンもたくさんありました❗

人は独りでは生きていけず、誰もが自分の声を聴いてくれる仲間や魂の番との出会いを求めているけど、それは容易な事ではないと思いました。

一生出会えずに死んでいく人も多いのではないか。50歳にして独身独り暮らしの自分も、声を聴いてくれる仲間や魂の番といえる人を探し出会うことを人生の課題の一つにしたいと思いました。

「銀閣の人」門井慶喜(角川書店) 1800円+税

銀閣の人」は銀閣寺を築き日本文化の原点とも言われる東山文化を牽引した足利義政の生涯を描いた作品です。

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戦国時代の到来のきっかけとなった応仁の乱を招いた政治家として無能のレッテルを貼られ、妻の日野富子に頭が上がらないダメ将軍として現代でもイメージが良くない室町幕府8代将軍足利義政

しかし、その一方で彼は当時右に出るものがいない程の教養を持つ超一流の文化人という一面を持っていました。

そして現代まで脈々と続く日本建築のスタンダードである書院造りや畳を敷いた四畳半を発明しました。

現在、国宝として京都の銀閣寺(慈照寺)に現存する東求堂。その中に残る原点の部屋「同仁斎」を足利義政が造り上げるまでの一大プロジェクトを描いたのがこの物語です。

東山に銀閣寺を築き、「政治で負けても、文事で勝つ」という強い想い。そこに至るまでの間にどの様な出来事があったのか、どの様な想いがあったのか。

祖父で金閣寺(鹿苑寺)を建てた足利義満に対する対抗心、くじで選ばれて恐怖政治を行ったために暗殺された父、足利義教に対する想い。

また、経済感覚に優れ政治家としても一流で女将軍と呼ばれた妻の日野富子に抱く愛憎、酒に溺れ母親の人形のように育ってしまった息子で9代将軍の足利義尚への悔恨。

家族や弟との確執や経済的困難にぶつかりながらも、連歌の宗祇や茶の村田珠光といった当時一流の文化人の力を借りながら築き上げた東山文化。

この作品を読んでまた銀閣寺にいきたくなりました。その時には是非、東求堂とその中にある同仁斎も見て、足利義政を感じてみたいと思います。

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