とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

「想い雲 みをつくし料理帖」高田郁(ハルキ文庫)

大阪の水害によって両親を失くした少女が江戸で一流の料理人を目指し多くの困難や壁にぶつかりながらも、大切な人たちに助けられ支えられながら成長していく感動の人情物語です。

f:id:kurakkaa:20201223221837j:plain

「想い雲」は、みをつくし料理帖シリーズ3作目です。

今回も1作目、2作目同様に艱難辛苦が降りかかる雲外蒼天の運を持つ澪に様々な困難が降りかかってきます。

大阪での奉公先天満一兆庵の若旦那で今は行方知れずの佐兵衛の消息を知っているかもしれない人物との再会や、江戸での奉公先のつる家の偽物や料理が真似されたり、主人公の澪が妹のように可愛がっている、ふきの弟の健が行方不明になったりと次々に難題がやってきます。

その度に吉原の料理人の又次や隣の住人おりょう、口入れ屋の隠居のりうといったクセは強いけど人情厚い人たちに助けられて困難を乗り越えていきます。

今回は幼なじみで今は吉原で花魁をしている野江と少し会えたり、行方不明の佐兵衛のことが少し明らかになってきたりとちょっとずつ物語が進んでいるのを感じました。

この作品には沢山の魅力があって、いろんな困難にぶつかって重苦しくなりそうなストーリー展開でも江戸っ子たちの軽妙なやり取りがあちこちに出てきてクスリと笑えるところもその一つです。

駄洒落や大喜利、登場人物たちのリアクションなどまるで古典落語を聴いているような感じで一気に物語に引き込まれます。

また、自分のことは二の次にして他人を助けようとする江戸っ子たちにホロッと涙するシーンもたくさん出てきて、笑って泣けるとても魅力的な作品だと思います。

旬の食材の変化や暦、当時の江戸のイベントで季節の移り変わりを感じることができるのもいいし、勉強にもなります。

巻末には料理人である澪が作中で作った料理のレシピも載っていて季節ごとの旬の食材を知ることができてべんきょうになります。

今回は特に、うなぎやハモの皮膚には毒があって、怪我をした手で触ると腫れて大変なことになるというのははじめて知ってへぇ~と思いました。

みをつくし料理帖シリーズは本編だけで10作品あるようなので残りの巻も読んでいきたいです。

f:id:kurakkaa:20201223234427j:plain