ジャニーズ事務所所属のアイドルグループNEWSのメンバー、加藤シゲアキさんが執筆し、第164回直木賞の候補作となったり、2021年本屋大賞にノミネートされ、8位となったり、ついには第42回吉川英治文学新人賞を受賞し、今年2021年の前半に大きな話題となった作品です。
僕はアイドルなど、芸能人が書いたとかの話題性だけで本を買うことはないのですが、この作品は今年の本屋大賞にノミネートされたということで、年明けくらいに買って積読してあったのですが、大賞が発表された後もほったらかしにして忘れかけていたものをようやく引っ張り出して読みました。
この作品はオルタネートいう高校生限定のマッチングアプリをめぐって3人の高校生の男女がそれぞれ部活、恋愛、家族との関係などに悩みながらも少しずつ成長していくオムニバス形式の青春小説です。
オルタネートに抵抗感を感じ、同調圧力にさらされながらもアプリを使うことを躊躇している高校3年生の新見蓉(にいみいるる)。
逆にオルタネートにどっぷり依存してついには遺伝子レベルで相性診断してくれるジーンマッチという機能を使ってまで最高の恋愛相手を見つけようとする高校1年生の伴凪津(ばんなづ)。
そして2年生で高校を中退してしまったためにオルタネートが使えなくなってしまった楤丘尚志(たらおかなおし)。
この3人の物語がバラバラですが同じ時系列の中で進んでいきます。
人とつながるとはどういうことなのか、リアルとデジタルの両方で人間関係に悩みながら成長していく今どきの高校生たちの姿が爽やかで好感が持てました。
特に僕は料理コンテストの全国大会を目指す調理部の部長の新見蓉が、去年の大会でのトラウマ、後輩や父親との関係、さらに恋愛と、多くのことに悩みながらも料理に打ち込んでいく姿にハラハラしながらも女子高生ですが、感情移入してしまいました。
ほかの二人もいろいろなことに悩む不安定な普通の10代の男女であり、自分の高校生のころと重ね合わせて感情移入しやすくて、とても面白い青春小説でした。
加藤シゲアキさんの「ピンクとグレー」という別の作品ももう買ってあるのでそちらも読んでみたいと思います。