とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

「雄気堂々 下」城山三郎 新潮文庫

2021年NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公、渋沢栄一を主人公にした作品の後編です。

f:id:kurakkaa:20210625121034j:plain

今の埼玉県の一農民の子に過ぎず、薩長土肥といった藩閥にも属さず、幕末維新で何か功績があったわけでもない渋沢栄一が、なぜ明治の元勲と肩を並べる近代日本の偉大な指導者になれたのか。

幕末から明治を描くこの作品は、単に渋沢栄一の成長を描いた作品であるだけではなく幕末から明治にかけての激動の時代を通じて日本という国そのものが近代国家へと成長していく姿を描いた作品だと思います。

これからの日本はどうあるべきなのか国民の誰もが試行錯誤しながら生きている明治という時代が1990年代以降のIT革命によって急速に変化しつつある現代の日本に通じるものがあると感じました。

また、合本組織(株式会社)を理想とする栄一と、カリスマ的な経営者による独裁的な組織を理想とする三菱の創業者、岩崎弥太郎との日本の海運業をめぐる対決は見物でした。

海運業を独占し、もはや我が物顔で横暴とも言える振る舞いをする三菱に対して渋沢栄一達が妨害や嫌がらせにあいながらどのように対抗するのか、ハラハラしながらも先が気になってサクサク読めました。

上下合わせて900ページを超える大作でしたが心が熱くなるのを感じながら楽しく読むことができました。

これから大河ドラマを観るのもますます楽しくなりそうです。