僕は個人的には夏の3大文庫フェアの中ではこの新潮文庫の100冊が一番好きです。
理由は単純で、キュンタうちわしおりが好きだからです。
しおりとしての機能性はともかく、夏らしい涼しげなデザインとペラペラな材質が好きで、これが目当てでついつい文庫本を買ってしまいます。
だから、今までにもたくさん買った気がしていて、読んだことがある本も新潮文庫が一番多いと思っていたのですが、改めて数えてみると意外にもカドフェスよりも少なかったです。
ちなみにカドフェスに挙げられている作品では17作読んだ記憶があったのですが、新潮文庫のほうは13作でした。
とはいえ、文庫本になる前の単行本の時に読んだものとか、かなり昔に読んでいて、内容が忘却の彼方に飛んで行ってしまっているものや、それほど昔ではなくても心に刺さらなかったのか、読んだ記憶だけはあるけどほとんど印象に残っていない作品もありました。
ここでは強く印象に残っている4つの作品を紹介したいと思います。
1「いなくなれ、群青」 河野裕
まっすで美しく、悲しくて切ない青春ファンタジーです。映画化もされた人気作品です。
群青とつく題名通り、真っ青な海や夜明け前のまだ暗い空といった群青色を想起させる自然風景の描写がとても印象的な作品で、幻想的なラッセンの絵画を鑑賞しているような印象を受けたのを覚えています。
この作品は十二国記のエピソード0とでもいえる作品です。
十二国記といえば、この、本が売れない時代に売り上げ発行部数が累計1200万部を突破したという壮大な中華ファンタジーですが、この「魔性の子」はファンタジーというよりはホラーの要素が強めです。
人が人であるが故のエゴ、汚さ、醜さに追い詰められていく少年が読んでいて辛かったです。
たぶん、この作品だけ読んでも何のことかわからないと思うので、合わせて十二国記の「風の海 迷宮の岸」(少年が人間界に来る前のエピソード)と、「黄昏の岸 暁の天」(少年がなぜ人間界に迷い込んできてしまったのかのエピソード)を読むことをお勧めします。
また、少年がその後、元の世界に帰ってからのエピソードである「白銀のおか 玄の月」も見逃せません。
3「村上海賊の娘」 和田竜
2014年の本屋大賞を受賞した作品です。
戦国時代に瀬戸内海を支配した村上海賊が大坂の本願寺を包囲した織田信長の軍勢に対して戦いを挑み、死闘を繰り広げた、第一次木津川口海戦までの物語です。
終盤の村上海賊と、信長側の泉州海賊との戦いの描写は血沸き肉躍る、まさにエンターテインメント性抜群の作品です。
4「楽園のカンヴァス」 原田マハ
僕が原田マハさんを大好きになったきっかけの作品です。
19世紀から20世紀初頭にかけて活躍したフランス絵画の巨匠アンリ・ルソーの絵の謎をめぐるミステリーです。
当時のルソーのパリでの生活の様子や、ピカソをはじめとしたほかの画家との交流、当時の西洋絵画の潮流や歴史が学べると同時に、現代では絵画のなぞに挑むルソーの専門家であるティム・ブラウンと早川織絵が互いに競い合いながらも次第に惹かれあっていく過程が切なくてとてもいいです。
読後感がさわやかで、今でも読み終わった後の余韻を思い出すといい気分になれるくらいです。
新潮文庫の100冊の中には気になる作品がほかにもたくさんあるので、選ぶのが大変ですが、何冊か購入してぜひ読んでみたいと思います。