大きな書店に行くとワクワクが止まらなくて、2時間でも3時間でも店内をぶらぶらして色々見て回るのですが、その中でも生物や宇宙に関する書籍のコーナーには美しい生物や星の写真集や、文系の僕でも興味をそそられるエッセイなどが並んでいてついつい買ってしまいます。
この本もそんな風についつい手が出てしまった1冊です。
ちょっと前に「スマホ脳」という本を読んだのですが、その本によると人類は誕生以来数百万年の間、アフリカのサバンナで狩猟採集生活をしていたので、そのころの環境に適応して脳が進化したために、ここ数十年の急激なデジタル化についていけずに体や脳に異常をきたして、精神科の診療を受ける人が世界中で急増しているという内容でした。
この本はさらに範囲を広げて、人間が進化の過程で身に着けた、生物として持っている遺伝子に刻まれたプログラムが原因で遺伝子の指令が強すぎするだけだから、現代文明に対応できないのが原因で、頑張ってもしょうがない項目を51項目あげています。
自分で、こんな癖はよくないなぁとか、直さなくてはいけないと思うんだけどどうしても直らないということでも、本人の資質ではなくて生物学的にしょうがないんだということがこんなにあるということを知って、自分の責任ではないと、ちょっと気持ちが楽になりました。
たとえば自分は行動に一貫性がないことが昔からの悩みで、いろんなことが気になったり気持ちが揺らいでしまって、あれこれと挑戦はしてみるのですが、結局どれもちゃんと身につかずに中途半端になってしまい今日に至っています。
しかし気持ちが揺らいでしまう原因は、数百万年続いた狩猟採集生活時代には小さな集団の中で一つの役割に集中できていたものが、つい最近のたった数千年前に始まったばかりの文明社会になって、学校や部活、会社など個人が所属する集団が複数に増えて、一つの役割に集中できなくなって、いろいろな状況に対応しなければならず、一貫性にこだわっていられなくなってしまったから、不安になってしまうなんだそうです。
現代は自分の振る舞いが固定化できない社会となってしまったために「自分の揺らぎ」に不安を感じるように進化しているのだとか。
そんな風に教えてもらうと自分がどれもこれも中途半端になっているのも仕方がないのかなと思えてきます。
現代のように複雑にいろんなことが絡み合った文明社会に対応するには一つのことだけに集中することはむしろ危険で、逆に「広く浅く」身に着けているほうがかえっていいのではないかと思えてきました。
ほかにも、なんでも先延ばしにしてしまうとか、片付けができないとか、人前で話すことに緊張してしてしまうなど、直したいと思っていることも人類の進化の過程で生き残るために遺伝子に組み込まれたプログラムであって、個人の資質ではないのだとわかりました。
こうやって「ポジティブに諦めてよい」というものが51項目もあるので、一人ひとり自分で悩んでいたことも解決できるのではと思います。
こうやって人間の行動を生物学的に説明してくれる本書はとても面白くて興味深かく、しかも難しい用語も出てこないので簡潔で読みやすくてスラスラ読むことができました。
これからもこういった生物学のエッセイはちょくちょく読んでいきたいです。