とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

「銀杏手ならい」西條奈加(祥伝社文庫) 700円+税

昨年、映画化された高田郁のベストセラー時代小説「みをつくし料理帖」にハマってから時代小説の魅力に気づいて他の作家さんの作品も読んでみたいと思い購入しました✨

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「銀杏手ならい」は3年たっても子供に恵まれず嫁ぎ先から三行半を突きつけられ失意のなか実家の手習所「銀杏堂」に戻ってきた24歳の萌が主人公です。

すっかり自信を失くした萌に父の嶋村承仙から「銀杏堂」を任され自分の後を継ぐように申し渡される。

子供たちに女先生と侮られて悪戦苦闘の日々をっていたある秋の朝、銀杏の木の下に捨てられている女の子の赤ん坊を発見。

自らも捨て子であった萌はその赤ん坊を自分の子供として育てることを決意するが…。

この作品は主人公の萌をはじめ、母の美津や父の友人で椎塾の師匠の椎葉、他の塾の師匠たちが子供たちに注ぐ愛情の深さに感動します。

また、師匠たちだけではなく、貧乏長屋の大家や住人たちが片親を失くした子供たちをなんとかサポートしようと奔走する人情溢れる姿にも涙を誘われます。

手習所に通う子供たちは江戸時代ですので身分も違えば育ってきた環境もバラバラで、裕福な家の子供もいれば貧困にあえぐ家庭の子もいます。

おまけに物覚えの早い子もいればいくら勉強しても文字が覚えられない子もいたりと能力も様々です。

中には他の子が当たり前に出来ることが出来ず、すっかり自信を失くしてしまう子供も。

萌や椎葉をはじめ塾の師匠たちは、「子供たちひとりひとりを、疎かにしたくない」という思いで子供たちと向き合っていきます。

まだまだ新米の手習い師匠の萌ですが試行錯誤、悪戦苦闘しながらも成長していく姿がいじらしく、応援したくなります。

そんな時に銀杏堂の門前の銀杏の木の下に捨てられていた赤ん坊を育てようと決意した萌に次々と困難がやって来ます。

果たして萌は子供たちに手習いをしながら赤ん坊の世話が出来るのか、母親になることが出来るのか。

江戸時代において捨てられた赤ん坊を見つけたらどうすればいいのか、ちゃんとルールがあることや、ある程度のサポート体制があったことを知って勉強になるとともに驚きました。

それでも捨てられた子供は養い親に疎まれたりこき使われたりと死んだ方がましだと思えるほど過酷な運命をたどることも多かったそうです。

そんななかで捨て子の萌を愛情をもって育て上げた両親の姿に涙しました。

また、そんな両親に感謝し、捨てた親に対して恨みが薄い自分に対して誇りに感じる萌にも感動しました❗

残念ながら2017年に出版されたこの作品には続編は無いようですが、もし続編が出ればぜひ読んでみたいです🎵

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「「2020」後 新しい日本の話をしよう」河合雅司(KODANSHA) 1300円+税

累計88万部を突破した、人口減少社会の日本の未来でどんなことが起こるかを描いた「未来の年表」の著者が、コロナ終息後の我々がどの様に生きるべきかを提言した本です。

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新型コロナウイルスによって大打撃を受けた日本経済をどの様に復興させればのいいか、これから日本に確実にやってくる人口減少社会という現実を踏まえなければ失敗すると著者は言います。

21世紀の日本は過去に誰も経験したことのない急速な社会の縮小を目の当たりにするといいます。

女性の過半数が50歳以上となり子供を生める女性が少なくなり、若者が減って全ての業種で人手不足が深刻化します。

そのためにお金はあるのにモノが手に入らなかったり行政サービスが滞るといった事態が起こります。

また、高齢者が激増して死亡者数が増え、空き家が増えたり火葬場が不足したりします。

2050年頃には会社も自治体も存続の危機に陥る事が予想される時代に我々はどう生きるか、今からどの様に準備すれば良いのかを提言しています。

最もよくないのはこの人口減少という問題に対し無関心でいること。

どんな環境でも、発想の切り替えと才覚次第でチャンスに転じ得ると著者は言います。

そのチャンスを掴むために我々が今から準備しておくべき事を巻末に「人口減少日本ですべき7つの方策」として掲載してあります。

これはなるほどと思えるのでぜひ実行したいと思いました。

これまでのやり方が通用しなくなる新しい時代ですが、時代を正しく読み、努力の方向さえ間違わなければ、どんな荒波が来ようとも必ずや成功を手にすることが出来るでしょう。

コロナ禍の中で2021年を迎えましたが、新年にあたってこれから先の未来がどの様になるのか常に関心をもっていこうと思いました。

「星系出雲の兵站3」林譲治(早川書房) 820円+税

「星系出雲の兵站」は、はるか昔に地球を離れて宇宙開拓に出て星間国家を樹立するまでになった人類が歴史上初めて地球人類以外の異星人に出会い、戦闘を繰り広げるという作品です。

中でも特徴的なのは戦闘そのものよりも戦闘をするために必要な兵站の確保をどうするかということに物語の主眼が置かれていることです。

星間国家出雲の人間で主人公の一人である火伏礼二兵站監が、兵站を担う星間国家壱岐に派遣され問題解決のために奔走するもよそ者であるがゆえに反感を買い軋轢が生まれたために暗殺されそうになったというのが前回までのお話です。

そして、今回は前回、異星人ガイナスに手痛い敗北を喫した人類が反撃に出ます。

今回のポイントは反撃作戦を成功させるためにガイナスに奪われた準惑星天涯の状況を把握する目的で威力偵察を命じられた降下猟兵部隊が見たものは?そして、無事に任務を終えて帰還できるのか?

一方、コンソーシアム艦隊の兵站の確保を巡って星間国家出雲と壱岐の主権と主導権の争いと駆け引きがますます激化。

この争いは果たしてどの様な形で決着するのかがこの巻の大きなポイントのひとつとなっています。

また、ガイナスとの戦闘において人類は原子熱線砲という強力な武器を繰り出します。

強力ではあるが冷却機構に問題があるこの兵器を最大限に活かす運用方法はあるのか?冷却機構を改善する手段は?問題解決に動くプロフェッショナルたちの活躍も見所となっています🎵

人類同士、異星人、両方で軍事と政治の駆け引きや攻防が見られて重厚で厚みのある、大人が楽しめる作品となっています。

4巻ではいよいよ第1部終了の区切りとなっているようなので、今後のストーリーはどのように展開し、どのような形で決着するのかとても楽しみです❗

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「ゴーストハント2 人形の檻」小野不由美(角川文庫) 760円+税

大ヒット中華ファンタジー十二国記」の作者で「残穢」や「営繕かるかや怪異譚」などのホラー小説も手掛ける小野不由美さんの原点とも言える作品ゴーストハントシリーズ第2作目です。

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戦前に建てられた古い洋館で起こるポルターガイスト現象の謎にに霊能者たちが挑みます。

今回も1作目で登場したイケメン少年で渋谷サイキックリサーチ所長の渋谷一也(通称ナル)とアルバイト助手で女子高生の谷山麻衣、巫女の松崎綾子、破戒僧の滝川法生、エクソシストジョン・ブラウン霊媒の原真砂子といった面々が集結。

霊能力者たちを嘲笑うかのように起こるポルターガイスト現象の原因は洋館に住む一家の誰かなのか、それとも悪意を持った強力な霊の仕業なのか?その真実が解明された時、彼らに大きな試練と苦悩が立ちはだかる❗


この作品の最大の魅力は、霊能力者たちがいきなり霊に戦いを挑んで倒すというような単純な話ではなくて、ポルターガイスト現象について徹底的に調査し、何が原因なのかを突き止めた上でどういう方法が最適かを考えている所だと思います。

温度センサーや集音マイク、サーモグラフィといった機器を駆使して科学的に現象を検証したり、家族一人一人から話を聞いて情報を収集したり心理学を使って分析したりと簡単に霊の仕業と決めつけずにあらゆる角度から検証しています。

また、この洋館がいつ建てられて、どの様な経緯で今の持ち主に渡ったか、今までに近くで事件や事故で人が死んだりしていないかといったことも徹底的に調査しています。

他にも海外で実際に起こったポルターガイストの事例や心理学者のフロイトユングの確執の話などにも触れられていて、とても深みのある作品となっています。

その上で女子高生谷山麻衣の語りという形式で物語が進むのでホラーだけど暗く重苦しいものになっていません。

前回1作目は霊現象ではなく地盤沈下といった自然現象によるところが大きい部分もあったけど、今回はガチンコで霊現象の話なので怖くて面白かったです❗

次もぜひ読んでみたいです✨

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「環境問題の嘘 令和版」池田清彦(MdN新書) 891円

フジテレビで放送している「ほんまでっかTV」に出演している生物学者池田清彦先生が環境問題をぶった斬るちょっと過激な本です。

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人間の経済活動によって二酸化炭素が増加し、地球が温暖化しているというのはまやかしであって、CO2削減によって儲かる人々が作り出した幻想であると主張。

地球が温暖化しているのは地球や太陽の活動による一時的な自然現象であって、長い目で見れば地球は寒冷化に向かっているという。

問題なのはCO2削減が利権の温床となっていて一部の企業や政府の金儲けの手段となっている。

そのためにマスコミによって大きく取り上げられて人々の不安を煽っている、これが地球温暖化問題の実態であると主張しています。

逆に森林や野性動物といった生態系を保護するために生息地を守ろうといった主張は金儲けにならないので一部の熱心な活動家が声を上げるだけで大きく取り上げられることはないと。

自然の一部である人間は健全な自然環境無しでは生きていけないにもかかわらず。

他にもエネルギー問題やゴミ問題、食糧問題などの嘘や提言が書かれています。

特にゴミの分別に関するムダや、一時期大きく取り上げられたダイオキシン環境ホルモンの嘘や利権のからくりは身近な問題だけあってとても興味深かったです。

最後にはこれらの環境問題を解決できる可能性があるテクノロジーや社会システムを紹介して問題解決策を提言しています。

僕が特に興味を持ったのが培養肉と人工光合成の技術です。

培養肉が実用化すれば野性動物や家畜を殺す必要が無くなるし、広大な森林を伐採して造った牧草地を自然に帰す事も出来るようになる。

また、人工光合成で炭水化物が作れるようになれば農地も要らなくなり全て野生に帰すことができるということです。

環境問題のほとんどは右肩上がりの経済成長を前提としたグローバル・キャピタリズムの副産物であるり、有限である地球の収容力が限界に達すればいずれ破綻せざるを得ない。

それを防ぐためにも一極集中やグローバリズムに見切りをつけて出来る限りの自立ができるローカリズムに移行していく以外にないと主張します。

今年はコロナウイルスパンデミックによって社会が大きな影響を受けて日常が変わりつつあります。

AIの発達によりますます混沌とし、時代が大きく動いている今を生きている我々はこれから何処に向かうのか。しっかり注目していきたいと思います。

僕としては地球温暖化が経済活動によるものか、それとも自然現象なのかは別として、新しい技術が開発されて進歩していくのは良いことなのではないかと思いました。

ただ、金儲けの手段として利用するために嘘をでっち上げ、何も知らない民衆の不安を煽っているというのが本当だとすれば大きな問題だと思いました。

読書の習慣が身に付くと沢山の人たちのいろんな主張に触れることが出来て物事を多角的に見ることが出来るようになるというのが良いところだと思います。

地球温暖化についてもすぐにどちらが正しいと結論を出すのではなく、いろんな角度から見ていきたいと思いました。

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映画「ラプラスの魔女」を観賞

映画「ラプラスの魔女」は東野圭吾さんの小説が原作で2018年5月に上映されました。

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メガフォンをとったのは映画についてあまり知識のない僕でも名前を知っている程有名な三池崇史監督です。

僕は三池崇史監督作品では今までに「藁の盾」と「悪の教典」という作品を観たことがありました。

過去に観たどちらの作品も人が惨たらしく殺されるシーンがあったので、三池監督作品は恐いイメージがあったのですが、「ラプラスの魔女」は殺人事件は起きますが殺戮のような恐ろしいシーンはありませんでした。

キャストは櫻井翔広瀬すず福士蒼汰といった若手人気俳優をはじめ、豊川悦司リリー・フランキーといったベテランの実力派俳優など豪華なキャストとなっています。

全く離れた温泉地で立て続けに硫化水素が原因の中毒死が発生し、地元の役所から原因の解明を依頼された地球化学者が不思議な能力を持つ一人の少女と出会い、2人で真相を追うというストーリーです。

CGを駆使した迫力ある映像と物語が進むにつれてスピードが増していくストーリー展開、国家までが絡んでくるスケール感などとても満足出来る内容でした✨

原作と比べると物足りないと感じる内容の映画も多いのですが、この作品は原作に忠実な部分も多くて違和感も無く、良かったです。

しかも小説よりも化学者青江と少女円華が共に行動するシーンが多く描かれていて、心に秘密を抱える円華が心情を吐露するシーンが良く表現されているような気がしました。もちろん演じている広瀬すずの演技力が大きいでしょうが。

我々凡人は一見何の価値も無さそうに見えるが、集合体となった時、劇的な物理法則を実現していく。この世に存在意義のない個体などただの一つもない。

この物語の中で一番伝えたかったことはこれではないでしょうか。

何の取り柄もない自分にも何らかの存在価値がある。
そう思わせてくれる作品でした。

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「烏は主を選ばない」阿部智里(文春文庫) 720円+税

八咫烏」の一族が住み、金烏と呼ばれる帝が世を治める「山内」という世界で繰り広げられる後継者争いを描いた、平安時代を彷彿とさせる和風ファンタジー八咫烏シリーズの2作目です。

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地方豪族の次男坊にすぎず、その無能ぶりからぼんくらとあだ名される雪哉がどういうわけか王朝の次期後継者である若宮殿下の側につかえることに。
しかしお仕えする若宮殿下は人使いが荒く、しかもとんでもないうつけ者だった。

シリーズ1作目の「烏に単は似合わない」は若宮殿下の后候補に選ばれた4人の高貴な姫君たちの争いを描いた物語でしたがこの中で若宮殿下がなかなか姫君たちのいる桜花宮に現れないという謎があり、2作目はその答えが描かれる形になっています。

つまり1作目と2作目は同じ時間軸で進行しながら別々の視点で描かれたストーリーとなっています。

1作目は后候補をめぐる女同士のプライドと陰湿な駆け引き、そしてそれぞれの姫の出身の家同士の争いでしたが、2作目は王朝のトップをめぐる血みどろの権力闘争となっています。

母が正室で優秀な長男である兄をさしおいて側室の子にもかかわらず日嗣の御子となった若宮は、長い間外界へ出ていて強力な後ろ楯もおらず、しかも周囲からはうつけ者と言われていて、次の金烏になることに不満を持つ者も多い。

その為たびたび命を狙われる若宮ははたして金烏に即位できるのか?若宮の命を狙う実行犯は誰なのか、その黒幕の正体は?
また、そんな若宮につかえることになった雪哉の運命は?など見所がいっぱいです✨

たびたび命を狙われる若宮や雪哉にハラハラし、後継者を争っている兄やその側近たちとの駆け引きや腹の探り合いに胃がキリキリしたりするほど物語の世界に引き込まれました。

また、真相が2転3転し、先が気になり早く読みたくて気もそぞろとなって仕事が手につかない程でした💧

巻末の解説によると、どうやらここまでは序章に過ぎず物語の本番は次の3作目以降だということです。

これから先、物語はどのように展開していくのか本当に楽しみです。この後の巻も是非読んでいきたいです❗

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