とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

2021年1月に読んだ小説

2021年1月は年明け早々新型コロナウイルス第3波の影響で僕が住む愛知県をはじめ隣の岐阜県、東京都や大阪府など11の都府県で再び緊急事態宣言が出されたり、日本海側で大雪になるほど寒い日が続いたこともあり、休日はどこにも出かけずに家でじっくり本を読むことが出来ました。

1月に読破した本は新書やビジネス本、マンガも含めて全部で15冊。そのうち小説は約半分の7冊でした。

ジャンル別ではファンタジーが2冊、時代・歴史小説が2冊、SFが1冊、ジャンル分けが難しい作品が2冊です。

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1,「星系出雲の兵站3」林譲治(ハヤカワ文庫)

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謎の異星人ガイナスとの戦闘において壱岐星系と出雲星系の主導権争いが激化。どの様な結末が待っているのか、ガイナスはどの様な異星人なのかその正体はいつ明らかになるのか続きが楽しみです。

2,「銀杏てならい」西條奈加(祥伝社文庫)

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武士に育てられた捨て子の娘が成長し手習い所の師匠に。新米先生が様々な身分や環境で育った子供たちを相手に奮闘し人間として成長していく姿が微笑ましい。

読了直後に西條奈加さんの「心淋し川」(集英社)が直木賞を受賞したので早速買ってきました🎵2月中には読んでみたいです✨

3,「神様の御用人9」浅葉なつ(メディアワークス文庫)

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神様の頼みごとを受ける御用人に指名されたフリーターの男が神様の無茶振りに悩み苦しみながらも何とか解決し成長していくコメディーファンタジーだったのですが、今回は結構シリアスな雰囲気。

しかも10巻に持ち越しという異例な展開です。次でシリーズは一区切りということで、完結してしまうのか、第2幕に繋がるのか、ファンとしては気になるところです。

4,「億男川村元気(文春文庫)

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失踪した弟の残した莫大な借金を請け負ってしまったために家庭が崩壊してしまった男がお金と幸せの答えを探して出会いの旅をする物語です。お金に関する偉人の名言や知識も学べてビジネス書としても読めます。

5,「銀閣の人」門井慶喜(角川書店)

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室町幕府8代将軍足利義政の生涯を描いた物語です。政治家としては無能のレッテルを張られた義政が「治国で負けて、文事で勝つ」の想いを胸に日本家屋の原点である銀閣寺東求堂の部屋"同仁斎"を造り上げるまでを描きます。

6,「後宮の烏5」白川紺子(集英社オレンジ文庫)

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80万部を突破した大人気中華ファンタジーです。
皇帝の夜伽をしない特別な妃「烏妃」をめぐる前王朝から続く数百年の因縁を断ち切るために動く人々やそれを利用して世界をひっくり返そうと暗躍する謎の人々など、展開が複雑でなかなか理解するのが大変です。

後宮の奥深くたった一人で生きてきた烏妃の寿雪に大切な仲間が少しずつ増えることで戸惑いながらも温かい気持ちが芽生える一方で、仲間をつくってはいけないという代々の烏妃の掟を破ってしまったという罪悪感に揺れる心がとても切ないです。

7,「52ヘルツのクジラたち」町田そのこ(中央公論新社)

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2021年本屋大賞ノミネート作品です。

児童虐待ドメスティックバイオレンストランスジェンダーといった重くて難しいテーマを取りあげた作品です。

重たいテーマなだけに、途中目を逸らしたくなるような描写も出てきて胸が締め付けられましたが、心温まるシーンもたくさん出てきて泣けました。心に残るいい作品だと思います。


引き続き緊急事態宣言が継続中で3月7日まで延長されることも決まったので、2月も休日はなるべく出かけずにじっくり読書三昧でいこうと思います。

特に2月、3月は本屋大賞ノミネート作品を中心に読んでいきたいと思います。

「52ヘルツのクジラたち」町田そのこ(中央公論新社)1600円+税

2021年本屋大賞ノミネート作品です。

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児童虐待やDV、性的マイノリティーといった重たくてなかなか取りあげづらいテーマをあつかった作品です。

52ヘルツのクジラとは世界で一番孤独だと言われているクジラ。その声は広大な海で確かに響いているのに、受け止める仲間はどこにもいない。

誰にも届かない歌声をあげ続けているクジラは存在こそ発見されているけれど、実際の姿は今も確認されていないという。

他の仲間と周波数が違うため、仲間と出会うことも出来ない。たとえ群れがすぐ近くにいたとしてもすぐ触れあえる位置にいても、気がつかずにすれ違ってしまう。

本当はたくさんの仲間がいるのに何も届かない。何も届けられない。それはどれだけ孤独だろう…。

主人公の三島貴瑚(26歳)は子供の頃から実の母親と義父から言葉や暴力、食事を与えられないなどの虐待を受け、成人してからも就職もさせてもらえず病に倒れた義父の介護をたった一人でやらされるという搾取を受けていました。

そんな貴瑚を救いだしてくれた人たちとも悲劇的な結末を迎え、何もかもが嫌になって逃げるように引っ越してきた大分県のある田舎町で彼女は一人の少年と出会います。

その少年はしゃべることが出来ず、母親からムシと呼ばれ酷い虐待を受け同居する祖父からは無視されていました。

52ヘルツのクジラたちである二人は声を聴いてくれる仲間の群れを見つけられるのか、愛を注ぎ注がれるようなたった一人の魂の番(つがい)に出会うことが出来るのか_。


子供の頃の貴瑚が母親や義父から虐待を受ける描写やたった一人で義父の介護を強いられるシーンは読んでいて胸くそが悪くなりました。

また、両親からの搾取という絶望的な状況から救いだされ、やっと平穏な生活をおくり始めたのに再び起こった悲劇に胸が締め付けられました。

その一方で、絶望的な状況から貴瑚を救いだしたアンさんや、疲れはて大分に行ってしまった貴瑚のために必死に動く親友の美晴には感動しました。

また、次第に元気を取り戻し、今度は少年を救うために奮闘する貴瑚の姿など、心が温まり、感動的で泣けるシーンもたくさんありました❗

人は独りでは生きていけず、誰もが自分の声を聴いてくれる仲間や魂の番との出会いを求めているけど、それは容易な事ではないと思いました。

一生出会えずに死んでいく人も多いのではないか。50歳にして独身独り暮らしの自分も、声を聴いてくれる仲間や魂の番といえる人を探し出会うことを人生の課題の一つにしたいと思いました。

「銀閣の人」門井慶喜(角川書店) 1800円+税

銀閣の人」は銀閣寺を築き日本文化の原点とも言われる東山文化を牽引した足利義政の生涯を描いた作品です。

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戦国時代の到来のきっかけとなった応仁の乱を招いた政治家として無能のレッテルを貼られ、妻の日野富子に頭が上がらないダメ将軍として現代でもイメージが良くない室町幕府8代将軍足利義政

しかし、その一方で彼は当時右に出るものがいない程の教養を持つ超一流の文化人という一面を持っていました。

そして現代まで脈々と続く日本建築のスタンダードである書院造りや畳を敷いた四畳半を発明しました。

現在、国宝として京都の銀閣寺(慈照寺)に現存する東求堂。その中に残る原点の部屋「同仁斎」を足利義政が造り上げるまでの一大プロジェクトを描いたのがこの物語です。

東山に銀閣寺を築き、「政治で負けても、文事で勝つ」という強い想い。そこに至るまでの間にどの様な出来事があったのか、どの様な想いがあったのか。

祖父で金閣寺(鹿苑寺)を建てた足利義満に対する対抗心、くじで選ばれて恐怖政治を行ったために暗殺された父、足利義教に対する想い。

また、経済感覚に優れ政治家としても一流で女将軍と呼ばれた妻の日野富子に抱く愛憎、酒に溺れ母親の人形のように育ってしまった息子で9代将軍の足利義尚への悔恨。

家族や弟との確執や経済的困難にぶつかりながらも、連歌の宗祇や茶の村田珠光といった当時一流の文化人の力を借りながら築き上げた東山文化。

この作品を読んでまた銀閣寺にいきたくなりました。その時には是非、東求堂とその中にある同仁斎も見て、足利義政を感じてみたいと思います。

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「日本の論点2021~22」大前研一(プレジデント社) 1600円+税

2020年は新型コロナウイルスパンデミックによって日本人が誰も経験したことがない大変な年となりました。

政治も経済も大混乱に陥ってリーマンショックを超える経済の落ち込みとなり、東京オリンピックは1年延期、全国高校野球は春も夏も中止になりました。

年末年始を迎える頃には第3波が襲来し、第1波、第2波を超える規模で感染が拡大し大都市圏では再び緊急事態宣言が発令されることに。

これから日本は、世界はどうなってしまうのだろう、コロナが終息した後は社会はどの様に変化するのだろう?そういうことを知るための助けになるのではと考えてこの本を読みました。

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とは言え読んでみると本の中身は未来への提言と言うよりは2019年から2020年にかけて国の内外で起こった出来事の解説と著者の考えをまとめたものという印象が大きかったです。

20世紀型の経済政策を今だに続ける政府への提言や延期や中止になったオリンピックや高校野球の在り方、9月入学の是非といった国内の出来事から、トランプ大統領の言動、中国や香港の情勢など海外の事までを解りやすく解説しています。

しかし、もちろんアフターコロナの世界がどう変わるのかについての予測も書かれていて、例えば世界各国が大規模な経済対策を打ち出して市場の資金がダブついて株価が高騰している現状は100年前の世界大恐慌の前に似ている状況だと。

ここからハイパーインフレ大恐慌、さらに戦争へと進んでいく可能性もあると著者は述べています。

まさかそこまでは…とは思うのですが、最悪の事態も頭に入れておくべきだとのことです。

では今後我々はどの様に生きていけばいいのか。

コロナ禍で生き残るには「デジタル」に対応するしかないと大前さんは主張します。

デジタルトランスフォーメーション(DX)を取り入れて20世紀型の人材から脱却し21世紀型の人材にトランスフォームするしかないと。

これからの時代を生き残るにはITの知識とスキルは必須なんだと改めて認識した次第です。

アフターコロナが、どの様な社会に移行していくのかまだまだわからないですが、DX時代に突入していくことは間違いなさそうなので、それに対応できる知識とスキルは身に付けていこうと思いました。

「億男」川村元気(文春文庫) 680円+税

失踪した弟の三千万円の借金を肩代わりしたばっかりに妻と娘と別居して昼は図書館、夜はパン工場で働いて返済する羽目になった主人公の一男が1等三億円の宝くじに当選。

突然手に入った大金に恐ろしくなった一男は大学時代の親友でビジネスで成功して今は大富豪になっている九十九に相談するが、一男の三億円をもって突然九十九がいなくなる。

大富豪の九十九はなぜ三億円を持ち逃げしたのか?

一男は九十九を見つけて三億円を取り戻すために彼の元ビジネスパートナーで今は富豪になっている3人の友人たちを訪ね歩く。

そこで彼らそれぞれのお金に対する考え方や使い方に接して、一男はお金について学んでいく。

一男は九十九を見つけられるのか、再び妻や娘と仲良く暮らせるようになるのか?

「お金と幸せの答え」を求めて冒険の旅に出た一男が最終的に出す答えとは?

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この作品は小説としても面白いけど、ビジネス書や自己啓発本としても読める、示唆に富んだ内容のある作品でした。

チャップリン福沢諭吉ソクラテスドストエフスキーといった海外の歴史上有名な哲学者などのお金にまつわる名言が数多く引用されています。

また、お金持ちになるための心得やノウハウも載っていて僕も参考にしたいと思いました。

お金があれば幸せなのか、幸せはお金で買えるのか、お金と幸せの答えは結論が出るのか?

前作の「世界から猫が消えたなら」もそうでしたが、幸せって何だろうって考えさせる作品でした。

「私たちはどんな世界を生きているか」西谷修(講談社現代新書) 900円+税

21世紀に入ってから世界も日本も社会も急速に変化し、高度成長の発展の中を生きてきた僕らの親の世代の価値観が全く通用しないほど劇的に変化した時代になったと感じます。

インターネットなど情報社会の大発展、一国至上主義の台頭と移民排斥や人種差別、テロ、経済格差の急激な拡大といった変化や問題が起きている現代は果たしてどこに向かって行くのか。

この本ではフランス革命以後のヨーロッパとアメリカ、そして明治維新以降の日本の歴史を振り返りながら、現在の我々はどの様な世界を生きているのか、そしてどの様な変化が今後訪れるのかを考えています。

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「神様の御用人9」浅葉なつ(メディアワークス文庫) 670円+税

神様の御用人」シリーズは2013年から続くメディアワークス文庫の人気作品です。

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大神の指名を受けて祖父の後を継いで八百万の神々の悩みを解決するためにフリーターの萩原良彦が日本各地を飛び回り奮闘するハートフルなファンタジーです。

また、その良彦が務めをサボらないようにとつきまとう、甘いものに目がないキツネの姿をした方位神の黄金、良彦に秘かに恋心を抱く生まれつき神の姿が見える天眼の少女穂乃香といった個性豊かなキャラクターたちが登場します。

オオクニヌシスサノオ、タケミカズチといった神話に登場する有名な神々からあまり知られていない神様まで色んな神様の悩みを、自らも悩み苦しみながら良彦が何とか解決して人間的に成長していく物語は笑いあり、涙ありで毎回グッと引き込まれてしまいます。

ところが、9巻では今までの明るい雰囲気が一転してシリアスなストーリー展開で、場合によっては日本が滅亡するかもしれないほどの壮大なものとなっています。

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また、注目されるのは今まで謎が多かった黄金の過去が遂に明らかとなり、モフモフのキツネの本当の姿が現れます。

奈良時代から平安時代にかけての大和朝廷蝦夷の戦いの歴史が、今回登場する神々と大きく関わっていて、悲しい影を落としています。

残念ながら9巻ではその全貌は明らかとならず10巻に持ち越しとなりますが、10巻でひとまずシリーズは一区切りのようです。これで終了なのか、その後新しいシリーズが始まるのかも注目したいところです。

10巻でこのストーリーがどの様に決着するのか、3月25日の発売が今から待ち遠しいです。