とっく~ブログ 

読んだ本の紹介をメインに、小説に出てきた聖地巡礼や、写真など

「狗神」坂東真砂子(角川文庫)読了。

狗神」は1993年に角川書店から発売されて2001年には映画化された作品です。


作品を読んでいるうちに昔映画を観たことを思い出したのですが、原作と映画では(ぼんやりとしか覚えていませんが)かなり異なる部分があるような気がします。


映画では竹野内豊が演じる若者の目線で描かれていましたが、原作では悲しい過去を引き摺って結婚出来ずに41歳まで独身でいる女性が主人公です。


女性は結婚して家庭に入り子供を産み育てるのが当たり前という古い考えがはびこる高知県の田舎の名家に生まれたために周囲の目を気にして居場所がない坊之宮美希。
毎日、生き甲斐である和紙を作ることで自分を保っています。


しかし、結婚して家庭を持つという別の幸せもあったのではないかと内心では後悔しています。


このまま自分は年老いていくのではないか、そう思いながら過ごしていたある日、中学校の新任教師として赴任してきた奴田原晃と出会います。


この奴田原晃がやって来た夜から村人達が奇妙な夢を見て寝不足になるなど、不可思議な現象が起き出して、原因は古くからの言い伝えである狗神の仕業ではないかと噂します。


そしてそれは狗神の子孫である美希の一族のせいであるとして不安と不満を募らせていきます。


そんな中、美希と晃は惹かれ合い結ばれますが、徐々に明らかになる美希の過去と、村人達の恐怖が暴発したときに最悪の事態が訪れます。


そこに晃の出生の秘密が明かになり、今までの不可思議な現象の正体が出現します。


ホラー小説ですが、一人の女性の運命が切なくて悲しいです。
そしてラストはこれからも続くであろう新たな恐怖。


日本の伝統や風習に沿ったホラー小説で、真夏に読むにはぴったりの作品です。f:id:kurakkaa:20190801133456j:plain