「このミステリーがすごい ! 2021年版」で1位になった作品です。
終戦間もない、まだ戦災の跡が生々しく残る復興途上の昭和24年の名古屋を舞台にしたミステリー小説です。
ミステリーの王道とも言える密室殺人のトリックや犯人のアリバイ崩しに加え、読者への質問状といった昔の探偵小説のような展開が世代によってはノスタルジーを感じ、若い人には新鮮に感じられる作品だと思います。
特に密室殺人の方は犯行現場の絵図まで示されていて、さあ、読者諸君、この謎が解けるかね?と言わんばかりでミステリー好きの謎解きの意欲を煽っています。
この作品の魅力はそれだけではなく、作者の辻真先さんは昭和7年生まれということで、当時の自分の経験をもとに終戦直後の名古屋の様子が詳しく描写されていて興味深いです。
また、民主主義を日本に根付かせるためにGHQが行った様々な政策や、新憲法発布など、世の中の雰囲気や環境が急激に変わり、子供達も新教育制度に移行して六三三制になったり、男女共学になり戸惑う当時の高校生達や教師など、当時の学校の様子が鮮明に描かれています。
主役の高校生たちは映画研究部と推理小説研究部に所属しているので当時の映画についての知識も相当出てくるので、映画に詳しい人にはもっと楽しめるのではないでしょうか。
続編の昭和36年を舞台にした作品も現在構想中とのことなので、そちらも楽しみです。