あらすじ
東日本大震災から四年後、ようやく復興しつつある好景気に沸く仙台市で拘束したまま飢え苦しませ、餓死させるという残酷な他殺体が発見される。
その残酷な殺害方法から担当刑事の笘篠は怨恨の線で捜査する。
しかし被害者は人から恨まれるとは思えない聖人のような人物で、容疑者は一向に浮かばないまま二体目の餓死死体が発見される。
二人の共通点を探っていくと、ある福祉保険事務所で同じ時期に勤務していたという過去が判明。
この場所でで何があったのか。
感想
貧困と格差、生活保護の受給問題を扱った社会派ミステリーです。
「法律と歪んだ信条が護るに値しない者を護り、護らなければならない者を見て見ぬふりをしている」
受給申請をごまかして不正に受け取ったり、親族の受給しているお金を横からかすめ取っていくような不届き者がいる一方で、本当に需給を必要としている人が国や他人に迷惑をかけたくないとか、生活保護を受けることは恥だと考えて申請をためらっている。
また、申請書類の量が膨大かつ複雑で、それだけであきらめてしまう人も。
申請をなかなか受理してもらえず、どんどん困窮して追い詰められていく登場人物たちを見て、胸が締め付けられ、やり場のない怒りやむなしさを感じる場面もありました。
一方で、貧しいながらもみんなで助け合って笑いながらたくましく生きていく姿に人との繋がり、絆、愛といった希望を感じることができる場面もありました。
中山七里の作品は以前「連続殺人鬼カエル男」とその続編を読んだことがあるのですが、この作品はサイコサスペンスと呼べるような凄惨な内容でしたが、今回読んだ作品はそれらとは全く毛色が違っていて切なくて悲しくて泣ける作品でした。
ほかの作品もぜひ読んでみたいと思いました。